チョウカイフスマ(ナデシコ科)の性表現
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概要
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チョウカイフスマ(Arenaria merckioides var.chokaiensis)は本州北部の鳥海山にのみ生育するナデシコ科の多年草であるが, 野外調査を通じて性が異なると思われる二型の植物が認められたので, それらの性表現, ならびに形態的特性, 開花習性, 果実や種子の形成率などについて詳しく調査した。その結果, チョウカイフスマの性表現は雌性両全性異株で, 両性花をつける株と雌花のみをつける株とが野外で共在することが明らかになった。両性花は雌花より花弁などが大きく, 雄性先熟性を示す。これに対して, 雌花は全体的に小さく, 葯は退化して小さくなり, 花粉を全く含まない。しかし, 柱頭の乳頭状組織は開花した時にはすでに発達し, 柱頭自体も両性花より大きい。また, 野外では両性花とほぼ同等の果実形成率を示し, 種子形成率はむしろ雌花で高い傾向にあった。小さな花弁, 花粉を消失した雌花は送粉昆虫を誘引するうえで, 両性花より劣っているように見えるが, 花蜜の分泌がそれを補い, また大きく発達した柱頭が雌花での花粉捕獲の機会を高めているように思われる。
- 1995-07-28
著者
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