オオヤマフスマ(ナデシコ科)における性表現の多型性
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概要
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オオヤマフスマは山地や丘陵地の日あたりのよい草地にふつうにみられる小型の多年草であるが, その性表現には多型性のみられることがTohda(1960,1965)やKitamura & Murata(1961)によって報告されてきた。しかし, 二つの報告の間には性表現の記載内容に違いが見られる。すなわち, 前者は, この植物に, 雌花をつける株, 雄花をつける株, 両性花をつける株の三型を認めているが, 後者は雄花と雌花が同一の植物体上に混在することを報告している。このように, 本種の性表現やその形態的特徴については十分に把握されていない。そこで, 本研究ではこの植物の性表現の多型性の実態を再検討するとともに, 各性型の花が野外集団でどの程度の果実や種子をつくっているのか, また, 開花習性はどうなっているのか, などについて青森県内の3つの集団を用いて調査した。その結果, いずれの集団においても, 雌花をつける株と両性花をつける株の生育が認められた。これはTohdaの報告とおおよそ一致する。しかし, 雄花をつける株の存在はこれら3集団では認められなかった。雌花は両性花に比べて小さな花弁, 短い花糸をもち, その葯は退化して花粉を含まないことから, 送粉昆虫を引きつけるうえでは不利のように見えるが, 野外では両性花とほぼ同じ割合(一つの集団では明らかに高い割合)で種子を生産していることがわかった。さらに, 両性花では雄性先熟性を示すために, 柱頭組織の成熟が開花から2〜3日以上後になるが, 雌花は開花時にはすでに柱頭組織を発達させ, 受粉可能な状態にあることも明らかになった。
- 1993-08-30
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