メアカンフスマの形態・細胞学的変異と種内分類群についての分類学的再検討
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概要
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メアカンフスマArenaria merckioidesは日本では本州北部と北海道東部の高山帯岩礫地に生育するノミノツヅリ属(ナデシコ科)の一種である。種内に2変種が認識され,本州北部の鳥海山個体群はチョウカイフスマvar. chokaiensis,そして北海道東部の雌阿寒岳・羅臼岳産個体群はメアカンフスマ(狭義)var. merckioidesとして一般に分類されている。しかし,これら2変種を認めない見解もあり,その分類はいまだにはっきりしていない。最近の調査で鳥海山個体群は雌性両全性異株で,しかも雌個体の花が両性個体に比べて有意に小さいことが報告されているが,雌阿寒岳,羅臼岳集団についてはその性表現さえわかっていない。従来の分類は花や葉の量的形質に着目して行われてきたため,もし性型の分化が起こっているとすれば,性型の違いに着目して形質変異を捉えることが必要になってくるはずである。予備調査を通じて,北海道雌阿寒岳・羅臼岳個体群も雌性両全性異株であることが確認されたので,性型分化に伴う花や葉の2型性に着目しながら,そしてそれに染色体解析を加えながら種内分類群の分類学的再検討を試みた。その結果,鳥海山,雌阿寒岳,羅臼岳の3集団は花弁や葉のサイズにおいて変異域が完全に重なり,また葉形や染色体数(2n=136)に関しても違いは認められなかった。しかし萼の長さや花弁長/萼長という形質における変異域の差異,そして地理的分布域を考慮すると,従来の2変種,すなわちチョウカイフスマ(var. chokaiensis)とメアカンフスマ(var. merckioides)を認めることができる。
- 日本植物分類学会の論文
- 2001-04-02
著者
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