雌性両全性異株エゾカワラナデシコの花生態及び繁殖に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
エゾカワラナデシコ(ナデシコ科)には両性花をつける株に混じって雌花のみをつける株が見られることが知られている。しかし, このような雌雄性の分化(雌性両全性異株性)にともなって, この植物の両性花と雌花との間で花の形態や開花習性, 送粉や交配にかかわる特性にどのような差異が生じているのか, また野外での種子や果実の形成, 花粉媒介者はどのようなものか, などについてはほとんど知られていない。そこで, 性型の異なる二つの花の基本的特性を明らかし, 野外での送粉や繁殖の様子を探ることを目的に, 青森県内の2つの集団を用いて調査を進めてきた。両性花と雌花との間には, 花の付属器官(花弁やがくなど)における大きさの違いが認められるが, 開花習性の上でもいくつかの興味深い違いが認められた。その一つは, 花柱発達時期(雌性期)のずれである。雌花では, 開花時にすでに花柱を高く伸ばして柱頭組織を発達させ, 受粉可能な状態にあるが, 両性花では雌性期が開花から2,3日後であった。もう一つは, 開花期間における雌性期の長さで, 雌花では両性花よりもかなり長い雌性期をもっていることが明らかになった。これらは, 雌花の受粉の機会を高めているように思われる。しかし, 野外での果実あたりの種子の生産数は必ずしも両性花より高くなく, 同様な性型を示す他の植物とはやや異なる状況であった。
- 日本植物分類学会の論文
- 1994-09-30
著者
-
菅原 敬
東京都立大学大学院理学研究科牧野標本館
-
中村 文子
弘前大学理学部生物学教室
-
菅原 敬
信州大学教養部生物学教室
-
神林 真理
弘前大学理学部生物学教室
-
星 秀章
弘前大学理学部生物学教室
-
三上 美代子
弘前大学理学部生物学教室
関連論文
- 本州北部に産する絶滅危惧種アオモリマンテマの花の形態と核形態の特徴
- 雌性両全性異株植物チョウカイフスマ(ナデシコ科)における柱頭の二型性, 花粉捕獲量, 種子生産に関する研究
- チョウカイフスマ(ナデシコ科)の性表現
- オオヤマフスマ(ナデシコ科)における性表現の多型性
- ウマノスズクサ亜属とオオバウマノスズクサ亜属(ウマノスズクサ科)24分類群の染色体数に関する研究
- matKシークエンスに基づくウマノスズクサ属(ウマノスズクサ科)の分子系統
- 新潟県とその隣県に分布するカンアオイ属植物, 特にコシノカンアオイとその近縁種に関する分類学的研究
- 五島列島福江島産カンアオイ属の一新種
- 中国雲南省南西部産ツリフネソウ属10種の核型
- ミネザクラにおいて見られる雌蕊長と雄蕊長の差による二型性
- メアカンフスマの形態・細胞学的変異と種内分類群についての分類学的再検討
- チョウカイフスマ(ナデシコ科)における雌雄性の分化と交配様式
- 雌性両全性異株エゾカワラナデシコの花生態及び繁殖に関する研究
- 台湾及び中国産カンアオイ属植物11種の核型
- 志摩半島及びその周辺地域に分布するカンアオイ及びズソウカンアオイ類似植物の分類学的研究
- 中国雲南省産カンアオイ属植物の一新種
- 中国四川省産カンアオイ属植物5種の核型〔英文〕