台湾及び中国産カンアオイ属植物11種の核型
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概要
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台湾及び中国大陸からは, これまで30種ほどのカンアオイ属(Asarum)植物が報告されているが, 染色体数や核型の特徴についてはわずか数種の報告があるのみである。それら多くの種は日本産のカンアオイとの強い類縁性が指摘され, 分類学的にも同一の分類群(Cheng and Yang, 1983,1988)として扱われることが多い。本研究では, 台湾と中国大陸に産するsect.Asarumの2種(Asarum leptophyllum, A.caudigerum var.caudigerum), sect.Heterotropaの8種(A.chinense, A.hayatanum, A.ichangense, A.macranthum, A.maximum, A.sagittarioides, A.splendens, A.taitonense), sect.Longifloraの1種(A.petelotii), 合わせて11種の核型を解析した。その結果は表1に示す通りである。ここで特に注目すべき事実は, sect.Heterotropaにおいて2n=24(x=12)の染色体数に加えて, 2n=26(x=13)の染色体数が4種で確認されたことである。これまでに中国産2種で基本数x=13が報告されていたが, 今回の観察により, この節の中国産カンアオイにはこのような染色体数がより一般的である可能性がでてきた。前川(1953)やCheng and Yang(1983,1988)によると, この節の諸種は, 特に日本産の常緑カンアオイに強い類縁性があるものとみなされている。しかし, この一群の日本産諸種にはx=13は見られず, いずれもx=12である。中国産のx=13の6種(A.chinense, A.maximum, A.sagittarioides, A.splendens, A.petelotii, そしてすでに報告されているA.delavayi)はその核型からはむしろ北米東部に固有とみなされている分類群(いわゆるHexastylis)に類似している。この結果は予想外であり, 今後, 中国産のsect.Heterotropaやsect.Longifloraの形態の再検討を含む, 分類学的検討が必要であろう。
- 日本植物分類学会の論文
- 1992-12-30
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