雌性両全性異株植物チョウカイフスマ(ナデシコ科)における柱頭の二型性, 花粉捕獲量, 種子生産に関する研究
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概要
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チョウカイフスマ(Arenaria merckioides var. chokaiensis)は秋田・山形県境に位置する鳥海山高山帯に固有なナデシコ科の多年草であるが,その性表現は雌個体と両性個体からなる雌性両全性異株(gynodioecy)であることが知られている。この植物では性型の分化に伴い,柱頭の長さにも二型性の分化が生じ,雌花は両性花よりも著しく長い柱頭をつける。この二型性柱頭の機能的意味を探るため,鳥海山野外集団において実際の花粉付着量,果実や種子の生産量を調査した。また実験園へ移植した両性個体を用いて自家不和合性の程度を調べた。その結果,雌花は両性花よりも有意に長い柱頭をもつにもかかわらず,実際柱頭に付着する花粉粒は両性花において多いという傾向が見られた。野外では雌花の長い柱頭は花粉捕獲のうえで実際有利に働いているとはいえないようである。また,野外での結果率や結実率(種子数/花)は両性個体より雌個体においてむしろ高いという傾向がみられた。この結果は花粉付着量と対応しないが,自家受粉による両性花の結実率が他家受粉による両性花の結実率よりも著しく低いという結果を考慮すると,野外における両性個体の結実率の低さには自殖による影響が現れている可能性がある。
- 1999-08-28
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