病院出産に伴う出産場所の移行とその要因 : 医療制度の再編が行われた1945(昭和20)年から病院出産が成立した1974(昭和49)年を中心に

概要

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本研究では, 戦後の医療制度の再編が行われた1945(昭和20)年から, 病院出産が成立した1974(昭和49)年までの約30年間に焦点を当てて, 医療制度や医療政策および母子保健政策関連資料などを用いて, 出産の場所が自宅・施設出産から病院および診療所出産に移行した要因を明らかにした。その結果, 出産場所が変更した要因は主に3つがあげられた。1つめは, 医療保険制度の充実と医療金融公庫の設立であった。これにより病院の財源が潤沢となり, 私設産婦人科病院の大型化が相次いだ。2つめは, 医療の利便性と出産給付の拡大であった。国民皆保険の実現により, 被保険者本人だけでなくその家族も医療給付の対象となり, 病院出産が安価に利用できるようになったのである。3つめは, 出産時の入院の簡素化が図られたことであった。つまり完全看護, 完全寝具, 完全給食に対する給付により入院の利便性が提供されたのである。すなわち, 出産の場所が自宅・施設出産から病院出産に移行したのは, 医療保険制度の充実, 出産時の給付拡大, 出産施設の拡大に向けた諸政策がほぼ同時期に重複して施行されたためであったといえる。