フタロシアニン薄膜の局在準位分布について

概要

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フタロシアニンは, 古くから顔料として知られていたが, 光伝導性が発見されて以来, 電子写真感光体の電荷発生層としての研究が盛んに行われるようになった。これまでのフタロシアニンの過渡光電流及び空間電荷制限電流の測定により, 局在準位密度分布は指数関数型であることが知られている。しかし, その起源については, 未だ明らかにされていない。一方, Silverらは, アモルファス半導体中のcharged defectsによる静電的な相互作用により, 指数関数分布が形成されることを数値計算により示している。フタロシアニンにおいては酸素がドープされることにより, PcM,0_2⇌PcM^+,0_2^-, となる反応が起こることが知られている。ここで, PcMは一般的な金属フタロシアニンを示す。我々はこのようにして生成されたイオンがcharged defectsとして働き, 指数関数型の局在準位密度分布の起源となることを示唆した。本研究では, 温度変化にともない大きく誘電率の変化するコバルトフタロシアニン(CoPc)の過渡光伝導測定を行い, その誘電率と特性温度の関係をSilverらのシミュレーション結果と比較することによって, 指数関数分布の起源について考察した。
社団法人電子情報通信学会の論文
1997-03-06