膀胱癌に対する根治的膀胱全摘術施行例の検討 : 骨盤内リンパ節転移の意義

概要

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私共は1984年以降原則として浸潤性膀胱癌に対して根治的膀胱全摘術と骨盤内リンパ節郭清を施行してきた.浸潤性膀胱癌の治療における骨盤内リンパ節転移の意義を明らかにするため,1984年から1992年までに行われた膀胱全摘症例のうち治癒的切除が可能であった131例について臨床的検討を行った.131例のうち,男性は110例,女性は21例で平均年齢は63.9歳であった.組織型は,移行上皮癌(TCC)108例,移行上皮癌以外の組織型を含むもの(非移行上皮癌,nonTCC)23例であり,移行上皮癌(TCC)の異型度はgrade 1 2例,grade 2 47例,grade 3 59例であった.深達度はpTis 8例,pTa 4例,pT1 36例,pT2 31例,pT3a 21例,pT3b 23例,pT4 8例であった.全症例の5年生存率は66.9%であった.組織型別では移行上皮癌(TCC)群69.8%,非移行上皮癌(nonTCC)群では33.3%であった.異型度別ではgrade2で80.4%,grade3で63.6%であった.深達度別ではpTis 83.3%,pTa 66.7%,pT1 97%,pT2 70.7%,pT3a 47.9%,pT3b 26.2%,pT4は4年生存率で25%であった.リンパ節転移は131例中22例(16.8%)に認められ,リンパ節転移陽性群の5年生存率は34.5%でリンパ節転移陰性群の73.8%と比べ予後不良であった.リンパ節への転移率は移行上皮癌(TCC)群が14.8%であったのに対し,非移行上皮癌(nonTCC)群は26.1%と高く,また移行上皮癌(TCC)群のうちわけはgrade2群は4.3%,grade3群は23.7%であった.深達度別では深達度が高い程転移率も高かったが,pT3a群(14.3%)とpT3b群(47.8%)との間に大きな差を認めた.リンパ節転移の部位は,閉鎖節,外腸骨節に多く認められた.これらの結果から膀胱腫瘍の予後を規定する因子としてリンパ節転移の有無は重要であり,リンパ節転移を生じ易い危険因子としては,移行上皮癌以外の組織型の存在,high grade,high stageが考えられた.特に深達度においてpT3aとpT3bの間にリンパ節転移率の大きな差が認められた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1995-04-20

膀胱癌に対する根治的膀胱全摘術施行例の検討 : 骨盤内リンパ節転移の意義

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