Incidental Renal Cell Carcinomaに対する腫瘍核出術の臨床的検討

概要

論文の詳細を見る
1980年1月から1993年2月までの間に腎腫瘍104例に手術をおこない26例27腎に腫瘍核出術を施行し,その内腎癌は18例であった. 18例中17例は,すべて無症候性腫瘍で,偶然発見されたものであった. 1例は,肉眼的血尿を主訴とする両側腎癌で,右根治的腎摘除術,左腫瘍核出術をおこなった.全例,局所性腎癌(stage 1)であり, low grade・low stage (15例はgrade 1, 3例はgrade 2),平均直径3.4cmであった.また,cell typeは,16例がclear cell type, 2例がgranular cell typeであった.18例中2例は死亡したが, 1例は腎癌と無関係で,両側腎癌の他1例は腎摘をした進行癌の転移によるものであった. 16例は最長92ヵ月間に渡り局所再発を認めない.腫瘍核出術のelective indicationとしては,以下の条件が重要と考える. 1.自覚症状のない, incidentalに発見されたものであること. 2. CT, MRI, Angiographyなどの画像上,腫瘍境界が明瞭であること. 3. 腫瘍が比較的辺縁に位置していること. 4. low grade・low stageの腫瘍であること. 5.腫瘍が直径3cm以下であること.最近,画像診断の進歩によりincidental cancerが増加しており,対象を選べば腫瘍核出術は,腎保存しながらも根治性を期待できる術式となりうると考える.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1994-06-20