地球及び地球圏外のピジオン輝石の転移,分解と離溶現象
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概要
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通常の岩石学的手法による輝石の研究に加え,EPMAの発達,そしてこれとX線単結晶法との組合せにより,地球産のはもちろんのこと月,隕石産輝石の離溶組織,転移の研究が活発に行われている。今回NAKAMURA and KUSHIRO (1970)による輝石相平衡関係の新しい考えに立脚してCa-poor pyroxeneの圧力変化の少ない条件下での離溶,分解,転移に関する総括を試みたので,それを支持する新しいデータとともに報告する。非アルカリ岩の火成岩中の輝石でかつCa-poor pyroxeneとCa-rich pyroxeneがCotecticな晶出をしているものの晶出順序はCrystallization Stage 1(Opx+Aug)→Stage 2(Opx+Pig+Aug)→Stage 3(Pig+Aug)である。そして輝石相平衡図上ではStage 1のOpxはPig, AugとOpxと共存する温度より下の温度で晶出し,Stage 2のPigはピジオン輝石共析反応線(Pigeonite cutectoid or cotectoid reaction line)上の温度で晶出し,Stage 3のPigはこの線より上の温度で晶出したと考えられる。各々のStageで晶出したCa-poor pyroxeneは晶出後の徐冷により,それぞれ輝石相平衡のSubsolidusな関係を示す特異な離溶組織を示す。Stage 1で晶出したOpxは(100)面にAugの細いlamellaeを離溶(=exsolution)する。これをCooling stage Aとする。Stage 2で晶出したPigはピジオン輝石共析反応によりAugとOpxとに分解(=decomposition)し,hostのOpxの(100)面にblebs状の太いAugのlamellaeを生じる(Cooling Stage Bとする)。更にStage Aを経る。尚Stage 2で晶出したOpxはStage 1でのOpxと同様であろう。Stage 3で晶出したPigはまず(001)面にAugのlamellaeを離溶(Cooling Stage Cとする),ピジオン輝石共析反応線通過後も,ピジオン輝石Solvusの準安定な延長に沿ってhostの組成を変化させながら,Opxの安定領域にいたるまで(001)Aug lamellaeの離溶を続ける(Cooling stage C'とする)。ここでhostはOpxに転移(Inversion:Iとする)するが,その際の軸の保存は悪い。更にStage Aを経る。上記の成因をもつものは順に,Bushveld型,金時山型,Stillwater型の斜方輝石に対応する。今までの考え方(POLDERVAART and HESS 1971等)との主な違いは(1)PigのOpxとAugへの分解(Stage B),(2)Pigの準安定なsolvusに沿っての組成変化(Stage C')の考えを提出したことである。以下に例を示す。A:Bushveld型。B:金時山型,Palisades型,月の15459。BA:SkaergaardのEG4392。CC'IA:Stillwater型,Moore County隕石(途中)。CC':Mt. Padbury隕石,Juvinas隕石。これらの知識は月・隕石やマントル鉱物など産状不詳試料の晶出冷却時の環境推定に有力な武器となろう。
- 日本地質学会の論文
- 1974-09-30
著者
-
武田 弘
千葉工大
-
石井 輝秋
Geological Institute Faculty Of Science University Of Tokyo
-
武田 弘
Mineralogical Institute, Faculty of Science, University of Tokyo
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