浮動小数点レジスタウィンドウを用いた擬似ベクトル処理
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概要
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近年、スーパースカラ方式などにより複数の演算器などをパイプライン的に並行動作することで、高速化を図るなど、スカラプロセッサの性能向上は著しいが、科学技術分野に適用させた場合、実効性能が著しく低下することが多い。これは、それらの分野ではデータ領域が非常に大きく、データの時間的局所性がない等の理由によって、プロセッサの高い処理能力に貢献する筈のキャッシュメモリが有効に働かないことが多いためである。一方、科学技術計算用のベクトルプロセッサはキャッシュに依存せず、主記憶をマルチバンクに分割し、アドレス付けをインターリービングすることで擬似的にパイプライン化し、主記憶とのデータ転送をベクトル命令によりパイプライン的に処理している。また大容量のベクトルレジスタを設け、ベクトルロード/ストア命令のベクトル長を長くすることで、主記憶へのaccess latencyが性能に与える影響を軽減している。そこで我々は、通常のスーパースカラプロセッサに対して主記憶のパイプライン化、プリフェッチ機能、キャッシュに代わる必要十分なレジスタの設定、という機能追加を行なうことにより、ベクトル命令の処理をスカラ命令を垂直マイクロプログラム的に用いて処理することを考えた。すなわち上記のような機能追加により演算用データを充分に供給でき、浮動小数点演算パイプラインを切れ目なく稼働させることができることになる。これによりスーパースカラ方式により並列に実行される複数のスカラ命令で、1つのベクトル命令の処理を擬似的に実行する擬似ベクトル処理が可能となる。一般にレジスタ数を増やすためには、命令のレジスタ指定フィールド長など命令セットアーキテクチャの変更が必要であるが、我々は浮動小数点レジスタのレジスタウィンドウ化を行うことによりこの問題を解決した。これにより提案するアーキテクチャは既存のアーキテクチャとの上位互換性を保つことができる。本稿では擬似ベクトル処理の原理、及びその評価結果を示し、提案方式の有効性を示す。
- 1992-02-24
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