Rhizopus arrhizus と Proteus vulgaris の組合せによるフマル酸醗酵からL-リンゴ酸への転換醗酵
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概要
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著者らはさきに, Rhizopus arrhizusのフマル酸醗酵に, アスパルターゼ活性の高い細菌, Proteus vulgarisを組合わせて培養し, 最終産物としてアスパラギン酸を多量に得る転換醗酵を確立した.そのさい, P.vulgarisによるフマル酸からアスパラギン酸への転換には高濃度のアンモニアの供与が必要であるが, 転換の過程で一時的に多量のL-リンゴ酸が生成することを認めた.このことからP. vulgarisはアスパルターゼとともに強いフマラーゼ活性も有しており, 窒素濃度を低くした場合には, フマル酸はもっぱらリンゴ酸へ転換され, さらにこのような条件下でRhizopusのフマル酸醗酵にこの細菌を組合せるならば, 多量のリンゴ酸を得る転換醗酵が可能であると考えた.そこでまず, さきにアスパラギン酸への転換醗酵に供試したアスパルターゼ活性の極めて強いP. vulgaris AHU 1144を, フマル酸4%を含む培地で振盪培養したところ, 窒素濃度の低い場合には培養3日後, フマル酸を約95%の収率でリンゴ酸へ転換していることが判明した.また他のProteus 5株でも同じ条件下で強いフマラーゼ活性が認められた.従って, 好気条件下で進行するRhizopus属のフマル酸醗酵に組み合わせて, ひきつづきリンゴ酸への転換醗酵を行なわせる菌としては, これまでに高いフマラーゼ活性が知られている微好気性の乳酸菌を用いるよりも, P. vulgaris の方がより好適であると思われた.つぎにProteus属以外のアスパルターゼ活性の高い細菌8株が, 窒素の濃度の低い条件下で同様にフマラーゼ活性を強く発揮するかどうかを試験した結果, いずれもリンゴ酸生成能が低かった.フマル酸からリンゴ酸への転換に対するP. vulgaris AHU 1144の最適接種量は, 1.4×10^49cells/mlで, フマル酸を4〜8%含む培地で振盪培養24時間後, 約95%もの高い転換率でリンゴ酸が生成し, 転換が終了した.そこでこれらの結果をもとに, グルコース8%含有培地にR. arrhizus NRRL 1526を1〜3日間培養後, P.vulgarisを接種し, ひきつづき混合培養したところ, R. arrhizusによって生成されたフマル酸はP. vulgarisによって速やかに転換されて多量のリンゴ酸を蓄積し, とくにP. arrhizusを2〜3日培養後, P. vulgaris を1〜2日間混合培養すると, 対始糖約80%あるいはそれ以上の高い収率でリンゴ酸が得られた.従来, 1種類の微生物によるリンゴ酸醗酵でも, このような短期間の培養で, グルコースからこれほど多量のリンゴ酸が生成された例は報告されておらず, 従って醗酵によるグルコースからのリンゴ酸生成には, この2種の菌を組合せた転換醗酵が最も望ましい方法と思われる.なおグルコース濃度を15%とした転換醗酵でも, グルコース8%のときと同様の高い収率でリンゴ酸が得られた.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1976-04-25
著者
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