フルフリールアルコールによって誘導されるCephalosporium sp.のAlcohol Dehydrogenase : (第1報)精製と一般性質
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概要
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前報において土壌中より分離したフルフリールアルコール資化性の菌株がCephalosporium sp.であること, およびフルフリールアルコールによってalcohol dehydrogenaseが誘導生産されることなどを報告した.本報告ではalcohol dehydrogenaseを電気泳動的に均一になるまで精製し, その一般的性質について報告した.Cephalosporium sp.をグルコース培地で2日間培養した培養液に0.2%相当量のフルフリールアルコールを加え, さらに24時間後に同量のフルフリールアルコールを加えて培養した.誘導培養48時間で集菌, 洗滌した後, French pressまたはBroun homogenizerにて菌体を粉砕, 抽出を行なった.粗酵素抽出液を, 凍結融解して凝固蛋白を除去し, 硫安塩析, Sephadex G-200によるカラムクロマトグラフィ(Fig. 1), DEAE-celluloseによるカラムクロマトグラフィ(Fig. 2)を順次行なって精製した.精製行程をTable 1に要約した.このようにして得られた精製標品はディスクゲル電気泳動によって単一蛋白を示した(Fig. 3).[table] Fig. 2の結果より, 酵素活性と蛋白量とがよい平行性をもっていること, ディスクゲル電気泳動像が単一であることから得られた酵素標品が均一であると推定した.精製酵素標品は不安定であり, 2-mercaptoethanol存在下でも速やかに失活するが, NaHSO_2の添加によってある程度保護される.この条件下で4℃で3日で活性は半減した.粗酵素液は精製酵素に較べると安定であった.酵素反応は100mMりん酸緩衝液(pH7.0), 4mM 2-mercaptoethanol, 82μM NADHおよび6.3mMのフルフラール中で30℃で行ない, NADHの酸化を338nmの吸光度の減少で追跡した.反応の時間経過をFig. 4Aに示す.60%のNADHが酸化されるまで反応は直線的に進行し, この反応速度を, 添加酵素量に対してプロットするとFig. 4Bのような直線関係が得られた.この酵素の最適pHは6.4であり(Fig. 5)最適温度は40℃であった.20℃から40℃の間での反応の活性化エネルギーは7.4kcal/moleと推定した(Fig. 6).また本酵素のフルフラールおよびNADHにたいするMichaelis定数を求め, NADH82μM濃度でのフルフラールにたいする見かけのMichaelis定数Km'は1.7mMであり, フルフラール濃度6.3mMにおけるNADHのKm'の値は12μMであった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
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