炭化水素醗酵の生物化学工学的研究 : (第3報)エマルジョン化現象の解析
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概要
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炭化水素資化性菌のもつ親油的性質が, 微生物による炭化水素のエマルジョン化の原因であるとの想定のもとに炭化水素醗酵のエマルジョン化現象について検討した.炭化水素資化性酵母は, 非資化性酵母に比較して, 炭化水素に対する強い親和性を示した.この親和性の差により炭化水素の資化能の程度, 発育速度あるいは界面活性剤などに対する挙動の変化があらわれるものと考えられた.炭化水素資化性酵母の細胞中に含有される親油性物質を抽出し, 若干の性質を調べた.抽出物(Lipid-A)はその少量で炭化水素を水によく乳化する性質をもつが, 2価の金属イオンにより乳化作用が著しく阻止された.炭化水素資化性酵母の発育のために最も適した炭化水素と細胞の関係 (configuration) について, "biologically active emulsion of hydrocarbon" と呼んだ.この状態は細胞のもつ親油的性質によるものである.また configuration の変化により酵母の発育現象に相違があることが認められた.そこで細胞の親油的性質, ひいては炭化水素と細胞の configuration に影響を与えるもの考えられる要因のうち, 合成界面活性剤, 天然産界面活性物質, 2価金属イオン, 油と菌体の濃度などについて調べた.合成界面活性剤は細胞の親油的性質を低下させた.その影響力とHLBとの間に関係があることが観察され, 菌と油との界面反応に効果を与えていることが推察された.一般に界面活性剤に対し insensitive である C.petrophilum も polyoxyethylene系のエーテル結合型界面活性剤にたいしては, 増殖阻害が認められた.界面活性剤に対し sensitive な P.miso はほとんどの界面活性剤により発育が低下した.これらの結果は両菌のもつ炭化水素に対する親和性の差に起因するものと考えられた.一方ある種の天然産界面活性物質は発育を促進させた.2価金属イオンは細胞への栄養以外に, 炭化水素-水相-細胞系の界面反応にも関与しているらしいことが認められた.炭化水素資化性酵母の発育速度, μは油と菌体の濃度比により著しく変化した.最大のμを維持するために必要な限界値(critical value of substrate supply)は, C.petrophilum を振盪培養した場合, 10 g-oil/g-cell であった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1971-03-25
著者
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