筍におけるリグニンの生成について(第V報) : パーオキシダーゼによるコニフェリール・アルコールの縮合に及ぼすアスコルビン酸-グルタチオン系の阻害作用について
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概要
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1.筍組織片の顕微化学的実験によつてperoxidaseは特に維管束部に多く, またphenol oxidaseに較べて強い活性度を示し, その活性度は下部程強いことが認められた。なお細胞膜壁に結合したperoxidaseが熱にも相当安定で可溶性peroxidaseよりむしろ強い活性度を示した。これらのことはperoxidaseが木化現象と密接な関係にあることを暗示しているようである。2.筍は上部でも木化に必要な因子が整つているのに木化しないのは, 上部には還元性物質が多いためではないかと考え, 筍の各部位で還元型ascorbic acid, glutathione量を定量した。その結果これら再物質は下部に至る程減少した。実際にconiferylalcohol, peroxidase, H_2O_2,ascorbic acidを共存させるとperoxidaseによりconiferyl alcoholが酸化され, この酸化型を通してascorbic acidが酸化されることが認められた。従つてconiferyl alcoholの酸化型はascorbic acidによつてconiferylalcoholに還元されて重合しないことが推定され, 更にglutathioneを加えるとglutathioneの一部がdehydroascorbic acid及び共存するdehydroascorbic acid reductaseの作用で酸化されることが認められた。これらの事はascorbic acid-glutathione系がconiferyl alcoholのlignin化を制限している一因子ではないかと推定させる。3.植物体中には広くcatalaseが分布しているが, peroxidase及びconiferylalcoholが存在する場合には, 生体内の酸化酵素反応によつて生ずるH_2O_2はcatalaseによつては分解されず殆んど全部がperoxidaseによつて利用されることが認められた。従つてperoxidase, H_2O_2,coniferylalcoholが存在し, ascorbic acid-glutathione系のような還元性物質が存在しない場合には組織中にcatalaseが共存していてもligninが形成される可能性があると思われる。
- 日本森林学会の論文
- 1955-11-25
著者
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