腐朽木粉中のリグニンの性質

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1. 白色朽菌5種, 褐色朽菌3種をブナ脱脂木粉に接種し, 5カ月後に腐朽木粉の組成分の変化を分析した。セルローズおよびベントーザンは両菌種によつて殆んど同程度に分解されたが, リグニンは白色朽菌によく分解され, 褐色朽菌ではわずかに分解された。其の他, 抽出物は従来知られているように腐朽材では一般的に増大した。2. アルコール=ベンゼン抽出物からコニフエリル, アルデヒド, バニリン, シリングアルデヒドが見出された。使用した木粉は実験前に充分脱脂してあるので, これら生成した化合物はリグニンの腐朽菌による分解生成物ではないかと考えられる。3. 各腐朽木粉をアルコール, ベンゼン抽出後, ニトロベンゼン, アルカリで酸化して生成する芳香族アルデヒドを定量した処, リグニン当りの生成アルデヒド量は腐朽によつて著るしく減少するが, 褐色朽菌では腐朽度が少ない時はかえつてリグニン当りの芳香族アルデヒド量が増大したのに, 白色朽では腐朽度の少ないものでも酸化によつて生じるアルデヒド量は健全材に較べて極めて少なくなり, 白色朽菌のリグニン分解力の強いことが暗示された。何れにせよリグニンの分解に当つてはLEOPOLD, ENKVISTが既に認めているように, リグニン中の"ニトロベンゾール酸化によつてバニリンを生じ易い構造部分"が優先的に分解されるようである。
日本森林学会の論文
1955-07-25

腐朽木粉中のリグニンの性質

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