イネ病害用新浸透性防除剤フェリムゾン(TF-164)の作用機作 : いもち病菌(Pyricularia oryzae)の代謝に及ぼす影響
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概要
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フェリムゾン(TF-164)はPyricularia oryzaeやHelminthosporium oryzaeなどによるイネ病害防除のために開発された新しい浸透性防除剤である。フェリムゾンはいもち病菌におけるタンパク質, DNA, RNA, 細胞壁合成を阻害しなかった。フェリムゾンは^$lt;14>C-酢酸や^<14>C-ピルビン酸の菌糸細胞内への取込みを阻害し, これらの前駆物質の脂質画分への取込みを見掛け上阻害した。その取込み阻害は脂質のいずれの成分においても均一に認められた。フェリムゾンはいもち病菌菌糸より調製した脂肪酸合成酵素活性をまったく阻害しなかった。一方, ^3H-ロイシンなどのいくつかのアミノ酸の酸不溶性画分への取込みは, フェリムゾンにより促進される傾向にあった。このように, フェリムゾンの作用点が, いもち病菌の生体構成成分の生合成系でないことが示唆された。フェリムゾンが, いもち病菌菌糸からの酸性電解質の漏出を起こすこと(既報)および, 酢酸やピルビン酸の細胞内への取込みを特異的に阻害したことより, イオンを含む酸性電解質の透過性に関与する膜機能に影響を及ぼすことが, フェリムゾンの作用点の一つであることが示唆された。
- 日本植物病理学会の論文
- 1989-07-25
著者
-
獅山 慈孝
京都大学農学部
-
古澤 巌
京都大学農学部
-
奥野 哲郎
武田薬品工業(株)アグロ事業部農業科学研究所
-
松浦 一穂
武田薬品工業株式会社農業科学研究所
-
松浦 一穂
武田薬品工業(株)農薬研究所
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