気管支喘息に対する油性ならびに水溶性金製剤による治療 : ことに血清中の金濃度と治療効果の関係について
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概要
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油性の金剤である gold thioglucose ならびに水溶性の金剤である gold sodium thiomalate を使用して気管支喘息患者を治療し, 次の成績がえられた.1.gold thioglucose では 118例中著効38例, 有効34例, 無効46例で, 有効率は61.0%, gold sodium thiomalate では19例中著効6例, 有効6例, 無効7例で, 有効率63.2%であつた.2.金剤による治療効果は, 若年群, 若年発病群, アトピー型の群, 軽症群, ステロイド剤未使用群などでは, 高年群, 高年発病群, 混合型ないし感染型の群, 重症群, ステロイド剤長期使用群などに比して有効率が高かつた.3.有効例のうちの過半数以上の症例において, 治療効果は2ヵ月以内にあらわれたが, 無効例では6ヵ月以上治療をつづけても効果のみられないものが多かつた.4.有効例では金剤の累積総使用量が90mg以下で効果のあらわれたものが多かつた.総使用量が 500mg以上の大量ではじめて効果あらわれたもたものは僅少例にすぎなかつた.5.金剤による治療開始当初には, 注射のたびに急速に血中金濃度は高くなつたが, あるレベルに達したのちはあまり動揺せず, 維持療法をつづけるかぎりほぼ一定の金濃度がつづいた.6.血中金濃度と治療効果の間には一定の関係をみつけることができなかつた.血中の金濃度は gold sodium thiomalate では gold thioglucose に比してすみやかに, しかもはるかに高い濃度に達したが, 治療効果は両者の間に差がなかつた.7.金剤による治療を中止したのちも, 治療効果は数ヵ月間つづくものが多かつたが, gold sodium thiomalate で治療したものでは gold thioglucose により治療したものに比して, 効果の持続時間がいくぶん短いように思われた.8.同じ症例に金療法, 減感作療法, バスパートならびにヒスタグロビンによる治療を行なつてこれらの効果を比較したが, 3者の間に一定の関係は認められなかつた.9.治療を行なつた 137例中16例に副作用を認めた.発疹がもつとも多く, 発熱.蛋白尿, 口内炎などが少数例にみられた.副作用のあらわれた時期は一定せず, 副作用と血中金濃度との関係も明らかでなかつた.以上の成績から, 気管支喘息に対する金療法は少量の金剤の注射より開始し, 注射量の増量はゆつくりと行ない, 十分な効果を認めたのちはそれ以上注射量を増量せず, しだいに注射間隔を遠くして, 副作用に留意しながら長期間つづけるのがよいと考える.
- 日本アレルギー学会の論文
- 1972-09-30
著者
-
河本 寛次
県立広島病院内科
-
坪井 信治
坪井内科呼吸器科医院
-
折田 良造
県立広島病院内科
-
勝谷 隆
広島県佐伯郡廿日市町
-
大塚 正
広島市己斐町
-
浜口 美博
広島市翠町
-
城 智彦
広島県立広島病院内科
-
菊地 博通
広島県立広島病院内科
-
折田 良造
広島県立広島病院内科
-
河本 寛次
広島県立広島病院内科
-
坪井 信治
広島県立広島病院内科
-
菊地 博通
県立広島病院内科
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