抗てんかん薬服用妊娠例における胎児の行動変化の解析による胎児中枢神経系の発達過程に関する研究
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概要
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中枢神経系作動薬である抗〓〓薬 (antiepileptic drug: AED) を使用している妊娠例の胎児行動を解析し胎児中枢神経系のAEDに対する反応を分析した。母体血中の薬剤が有効濃度に達し, 〓帯血中濃度も同等であることを確認したAED服用妊娠例13例を対象とし, 急速眼球運動 (REM), 呼吸様運動 (BM), 躯幹運動 (TM) を周波数の異なる超音波を使用し60〜90分間観察・記録し定量的解析を行った。各行動の頻度には10秒間の出現度数を, 行動相互の関連性には相互相関係数をその指標とした。fetal stateを観察時間内のREMの有無によりREM期とnon-REM期に区別し両期の出現割合, 持続時間, REM期におけるREM密度を算出した。対象を32〜35週と36〜40週の前期・後期の2期に分け, 妊娠中異常がなく正常新生児であった16例を対照群として検討を行い以下の成績を得た。AED投与群では対照群と比較して, 1) BMの出現頻度は特に後期において減少を認めた。TM及びREMの出現頻度は前後期とも変化を受けなかった。2) 観察時間内に占めるREM期の出現割合は前後期の両期とも増加した。non-REM期は後期にのみ出現割合の減少を認めた。REM期の持続時間は前期では有意に減少するのに対し, 後期では延長する傾向がみられた。non-REM期の持続時間は後期で著明に抑制された。3) REM 密度は両期とも減少を認めたが, 100%のREM密度を示す部分の割合は変化を認めなかった。4) 相互相関係数でみたREMとBM及びREMとTMの一致性には変化がなかった。以上の結果より, 胎児に移行したAEDは胎児中枢神経系に対し直接作用し, 胎児行動パターン, 特に睡眠リズムに影響を与えていること, AEDはその作用部位が主に脳幹より上位の中枢にあることから, AED投与により睡眠リズムが変化したことは胎児期においてもこれを制御する上位中枢の機能が存在し, その機能は妊娠週数により異なることが示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-10-01
著者
-
篠塚 憲男
日本早産予防研究会
-
水野 正彦
東京大学医学部産科婦人科学教室
-
岡井 崇
東京大学医学部産婦人科
-
水野 正彦
東京大学医学部産婦人科学教室
-
桑原 慶紀
東京大学医学部産科婦人科学教室
-
水野 正彦
東京大学医学部附属病院 産婦人科
-
篠塚 憲男
東京大学医学部産科婦人科学教室
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