妊娠中毒症の病態形成におけるPGI_2合成系の酵素活性の意義
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概要
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正常妊婦, 軽症および重症妊娠中毒症妊婦の臍帯静脈血管内皮細胞におけるアラキドン酸(A.A.)からPGI_2への転換量とそれより求めたcyclooxygenase (C.O.)とPGI_2 synthetase (P.S.)を併せた複合酵素の見かけ上の酵素活性, PGH_2からPGI_2への転換量とそれより求めたP.S.活性について検討した. 1) A.A.からPGI_2への転換量は軽症中毒症で有意(p<0.05)に多く, 正常妊娠, 重症中毒症の順であった. 2) C.O.とP.S.を併せた複合酵素のVmax (nM/mg protein) (mean±S.E.M.)は正常妊娠: 0.88±0.21 (n=7)が軽症中毒症: 2.76±0.71 (n=8)および重症中毒症: 1.63±0.18 (n=3)ょり有意(p<0.05)に低値, Km (μM) (mean±S.E.M.)は軽症中毒症: 0.29±0.07が正常妊娠: 0.76±0.25より有意(p<0.05)に低値で, 重症中毒症: 3.26±0.78は正常妊娠より有意(p<0.05)に高値であった. 3) PGH_2からPGI_2への転換量は軽症中毒症, 正常妊娠, 重症中毒症の順に低下した. 4) P.S.活性のVmaxは正常妊娠: 0.44±0.09 (n=5), 軽症中毒症: 0.61±0.10 (n=4)は重症中毒症: 0.11±0.06 (n=3)より有意(p<0.05)に高値であった. Kmは重症中毒症: 0.16±0.04, 正常妊娠: 0.13±0.06, 軽症中毒症: 0.12±0.07の順に高値であった. 以上のことより, 軽症中毒症ではとくにC.O.活性が亢進してA.A.を有効に利用して多量のPGI_2を産生でき, PGI_2を中心とした降圧系が充分に作動して血圧調節機構の恒常性が保たれた状態であるのに対し, 重症中毒症ではとくにC.O.活性とPGI_2の前駆物質であるA.A.濃度とがimbalance状態となり, PGI_2産生能が極めて低下した状態で, 降圧系が充分に作動せず血圧調節機構の恒常性が破綻した状態である. さらに, 軽症中毒症と重症中毒症での病態の相違はP.S.活性よりもC.O.活性の相違によるものであることが示唆された. また, 以上のような胎児循環系での結果は, おそらく母体循環系においても同様に存在していると推測された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1990-09-01
著者
-
関 博之
埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター
-
佐藤 和雄
日本大学医学部産科婦人科学教室
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佐藤 和雄
日本大
-
三橋 直樹
東京大学医学部産婦人科学教室
-
水野 正彦
東京大学医学部産科婦人科学教室
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関 博之
埼玉医科大学総合医療センター
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関 博之
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
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水野 正彦
東京大学医学部産婦人科学教室
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関 博之
東京大学医学部産婦人科
-
関 博之
Center For Maternal Fetal And Neonatal Medicine Saitama Medical Center Saitama Medical University
-
水野 正彦
東京大学医学部附属病院 産婦人科
-
佐藤 和雄
日本大学医学部産婦人科
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