DISODIUM MERCAPTOUNDECAHYDRO-CLOSO-DODECABORATEのラットにおける単回及び2週間反復静脈内投与毒性試験
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概要
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Disodium mercaptoundecahydro-closo-dodecaborate(BSH)の100, 300及び600mg/kgをラットに単回静脈内投与した時の毒性を, 投与速度の影響を含めて検討した。BSHによる中毒症状の主徴は, 投与直後からの全身硬直, 呼吸抑制, 活動性低下及び異常歩行であり, 600mg/kg群では中毒死例が発生した。死亡例は, 投与後10分以内の即時死例と投与5時間後から2日後の遅延死例に大別された。死亡率に明らかな性差並びに投与速度による差はなかったが, 雄の急速群では即時死例が, 雌では投与速度に関係なく遅延死例が多かった。死亡例の病理検査では, 即時死例は肺のうっ血・水腫, 遅延死例は腎近位尿細管壊死が主病変であり, これらが主な死因と推察された。腎障害は, 300mg/kg以上の群で投与翌日には尿細管壊死, 投与7日後は壊死後の再生像で示され, 尿検査, 血液化学的検査でも障害発生が裏付けられ, 投与7日後には貧血も認められた。他の器官障害は致死量である600mg/kg群に限って認められた肝細胞の変性, 心臓の出血・壊死, 下垂体前葉細胞の空胞化, 脳・膵臓の出血等であった。投与5分後の血中ホウ素濃度は, 投与量に比例した値を示し, 明らかな雌雄差もなかった。急速群と低速群の血中ホウ素濃度を同用量間で比較すると, 低速群で低値を示したものの, 顕著な差はなかった。以上のように, BSHのラット単回静脈内投与時の毒性標的は腎臓, 致死量は600mg/kgであった。また, 主な死因は, 即時死例では循環障害, 遅延死例では腎障害であった。
- 日本トキシコロジー学会の論文
- 1998-10-28
著者
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村岡 義博
塩野義製薬株式会社新薬研究所
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伊藤 文男
塩野義製薬株式会社新薬研究所
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薮内 一也
塩野義製薬株式会社新薬研究所
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大野 浩司
塩野義製薬株式会社新薬研究所
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池内 勲
塩野義製薬株式会社分析化学研究所
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村岡 義博
塩野義製薬(株)研究所・神崎川分室
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