日本コムギ品種と野生オオムギ Hordeum bulbosum L. との交雑親和性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
属間交雑によるコムギ半数体作出には母親のコムギと花粉親の野生オオムギ Hordeum bulbosum L. との間の交雑親和性の高低カミ影響する.そこでこの交雑親和性に及ぼす日本コムギ品種間差および H.bulbosum 系統間差を調べ,さらに授粉前に2種の化学物質をコムギの稈に注入した処理の効果についてもみた.母親に供試したコムギ32品種のうち22品種が H.bulbosum と授紛小花の10.4〜45.9%の結実率を示し,交雑和合であった.これらの品種は,育成系譜上,在来種間の交雑後代に由来する品種であった.また交雑不和合を示した他の10品種はいずれもその祖先親に欧米の品種を頻繁に含んでいた.花粉親として用いた H.bulbosum 17系統はコムギ品種フクホコムギに対し,4.1〜50.0%の結実率を示した.しかしながら,ハルヒカリに対しては1系統のみで極めで低率(0.9%)の結実率を示したにすぎなかった.化学物質の処理についてみると,ε-アミノーn-カプロン酸(EACA)は交雑親和性に何の効果も与えなかった.他方,2,4-ジクロルフェノキシ酢酸(2,4-D)は,フクホコムギの結実を顕著に多くするとともに幼胚を有しない結実も多数生じた。結果として100ppmの2,4-D処理によって幼胚を有する結実率は23.8%から48.6%に倍増した.しかしハルヒカリに対しては十分な効果はなかった.さらに有望な H.bulbosum と2,4-D処理を組合せた交配方法を用いた場合にはフクホコムギでは幼胚を有する結実率が58.2%にまで向上したが,ハルヒカリの結実は得られず,交雑不和合性を打破することができなかった、 以上の結果から,日本品種の多数をしめる交雑和合性のコムギを材料とするとき高頻度でコムギの半数体作出が可能であると考えられる.
- 日本育種学会の論文
- 1986-12-01
著者
関連論文
- 日本のオオムギ品種の育成系譜
- コムギの半数性幼胚からのカルス誘導および再分化
- コムギの半数体倍加系統における半矮性遺伝子 : Rht1およびRht2の収量に及ぼす効果
- コムギの半数性幼胚に由来する懸濁カルス培養における体細胞不定胚の発生
- コムギ3品種およびそれらのF1雑種における葯培養および属間交雑による半数体作出効率の比較
- オオムギ野生種(Hordeum bulbosum L.)との交雑を利用して作出したコムギ半数体倍加系統の稈長の変異
- 日本コムギ品種と野生オオムギ Hordeum bulbosum L. との交雑親和性
- オオムギ野生種(Hordeum bulbosum L.)との交雑から得たコムギ半数体の染色体倍加
- 日本のコムギ品種の育成系譜
- 野生オオムギ Hordeum bulbosum L. と交雑したコムギ品種農林61号の胚培養
- オオムギ品種の温度および日長に対する出穂反応
- オオムギにおける節間伸長開始期の品種間差異について
- オオムギ野生種 Hordeum bulbosum(4x)との交雑による日本コムギ品種の半数体作出について