コムギの半数性幼胚からのカルス誘導および再分化
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概要
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培養中の組織細胞から変異体を効率よく得るためには,材料として再分化能力の高い半数性組織細胞の利用が有効である.そこでオオムギ野生種Hordeum bulbosum L.との属間交雑によって得たコムギ品種農林61号の半数性幼胚を用いて,カルスの誘導および植物体の再分化を試みた.カルス誘導用には2,4-ジクロルフェノキシ酢酸2ppmを添加したB5培地を,再分化用にはB5培地のみを使用した.9個の半数性幼胚(約0.5mm長)を15週間培養し,約15mm径のカルスに発育させた.カルスは白色柔軟,黄色徴密および緑色斑点の部分から成り,用いた幼胚によってカルスの形状は異なった.9個のカルスを各六10個のカルス小塊に分割し再分化用培地に移植した。その結果,各六の幼胚に由来するカルス間で植物体再分化率に差異がみられたが,合計63個の植物体を得た.再分化植物は正常に発育し,すべて21本の染色体をもつ半数体であった.本実験では,幼胚を構成する器官を分割して培養量ず,幼胚全体を置床してカルス誘導に供試したので,各六の幼胚に由来するカルス間で,その形状に差異が見られ,これが植物体再分化率に影響した原因のひとつと考えられた。また再分化した植物体の染色体数に変異が認められなかったのは,半数性細胞における染色体異常が再分化にとって致死的であり,したがって安定した染色体数をもつ半数体が再分化したことによると推察された. 以上のことからコムギの半数性幼胚を材料としてカルスを誘導し,さらに半数性の植物体を多数再分化させることができた・今後,半数体倍加系統を作出して組織培餐中の半数性体細胞の遺伝的変異の有無を明らかにする必要がある.
- 1986-03-01
著者
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