冬季北半球における下層寒気の時空間変動の季節的な位相固定

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北半球冬季における大規模な大気循環と下層寒気の時空間変動の気候学的特性について、1980年から1988年までの9年平均気温と等圧面高度データを用いて解析した。大気の大規模な循環パターンは12月下旬(第70半旬)と2月中旬(第9半旬)に不連続的に変化しており、その間の期間では南北流がその前後よりも強まっていた。そこでこの70-9半旬の期間を北半球における気候学的な'真冬'(midwinter)と定義した。mid-winterの期間中、シベリア東部とカナダの北西地方に下層寒気が存在しており、約25-35日で周期的かつ位相が固定された変化が認められた。3つの主要な下層寒気(シベリア東部付近、カナダの北西地方、およびスカンジナビア半島付近に存在しているもの)について、それらの位相の固定された動きを850mb気温アノーマリーの合成図を用いて検討した。スカンジナビア半島付近にあった下層寒気は北大西洋の低気圧活動が活発な地域からチベット高原の北側まで移動していた。また、シベリアの寒気は気温変動が大きく、周期的に形成され、太平洋中部まで移動していた。さらに、北米大陸では下層寒気が南北方向にのびた形で吹き出していた。日本の従来の研究による自然季節の冬のサブステージ(真冬)は、ほとんどが本研究のmid-winterに含まれていた。従って、mid-winterの期間の下層寒気の吹き出しをともなった相対的に南北流の強い循環が日本に冬の最盛期をもたらすと考えられる。また、第73半旬の下層寒気の強まりはシベリア高気圧の形成と冬型気圧配置のシンギュラリティーを、mid-winterの終了は冬型気圧配置の急減をもたらすことが考えられる。このように、位相の固定された下層寒気の変動は日本付近の自然季節やシンギュラリティーのうちのいくつかについてその要因を説明できると考えられる。しかしながら最近数十年の気候変化は自然季節やシンギュラリティーにも経年変化をもたらしている可能性があり、この点に関しては今後解析する必要がある。
社団法人日本気象学会の論文
1993-02-25

冬季北半球における下層寒気の時空間変動の季節的な位相固定

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