ヤマセ風 (東北日本に吹走する低温の北東風) の気塊の鉛直構造に基づいた分類
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概要
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日本の東北地方の夏季に低温をもたらすヤマセ風について、1979年から1993年の三沢の高層気象データを用いて分類を行った。ヤマセ気塊の鉛直構造に対してクラスター分析を行い、7つに分類した。各クラスターに属するヤマセ気塊の特徴を、クラスター毎に平均して調べた。ヤマセ風による地表の低温域は気塊の高さに比例しているが、気塊の高さは必ずしも東風の高さと一致していない。ヤマセ気塊、東風共に高い (約800 hPa以上) 場合、地表では東風が東北地方全域を吹走し、強い低温域が太平洋側に認められる (クラスター2と6)。東風が高いが (約800 hPa以上)、気塊の高さが低い場合 (約800 hPa以下)、東風は東北地方全域を吹走するが、地表の低温はさほど強くはなく、寒気は山地によって効果的にブロックされる (クラスター3と5)。ヤマセ気塊、東風共に低い場合、地表の東風と低温域は太平洋側に限定される (クラスター1, 4と7)。各クラスターに属するヤマセ風の出現頻度には季節性が認められる。クラスター6と7は6月にのみ出現し、クラスター2と4は主に梅雨期に、クラスター1と3は梅雨後期から盛夏季に、またクラスター5は主に盛夏季に出現する。また、地上気圧配置、前線の頻度、および500 hPaの高度場はクラスターごとに特徴的な分布を示している。各年ごとにヤマセ風の出現頻度を調べたところ、夏が著しく低温であった1980年、1988年、および1993年には、クラスター2,3,4のヤマセ風が多く吹走していた。しかしながら、低温かつ高さの高い気塊を伴うクラスター2に属するヤマセ風が、夏季の低温に重要な役割を担っていることが示唆された。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1997-12-25
著者
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