筑後平担地域における中苗による水稲晩期栽培について
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概要
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実際にイグサを収穫した農家は場において試験を実施したが,本年は晩期栽培にとって非常に不利な気象条件であったにもかかわらず,中苗による晩期栽培が品質,収量の面でも比較的安定していることが実証されたと考えられる。以上の結果を要約するとつぎのとおり。(1)前年度の試験において筑後地域では品種「日本晴」を用いると田植機利用の晩期栽培が可能であり,この場合の晩植限界は冷害年を考慮すると7月25日頃であるとの結論を出していた。本年は昭和32年,40年についで夏季低温であったにもかかわらず,このような年でも前件の結論が妥当であることが確認された。(2)しかし,晩期栽培では稚苗よりも中苗の方が一層安定していることが明らかにされた。この場合の晩植限界は品種「日本晴」を用いると,筑後平坦地域では7月末頃までと考えられる。(3)晩期栽培における中苗の育苗技術はつぎの方法が適当である。ア 播種量は田植機の性能が許す範囲でできるだけ少なくする。できればユ509/箱以下が望ましい。イ 施肥法は基肥無窒素として初期生育を抑え,播種15日後頃(N・P_2O_5・K_20各0.5g/箱)と移植5〜7日前(各0.5〜1.0g)の追肥により,後半の生育を良好にするようつとめる。ウ 出芽後は直ちに外にひろげる。無被覆 エ 苗床日数は30日前後(4)実際の場面ではイグサ等前作物の収穫時期が必ずしも一定しないので,7月中・下旬移植を前提とした場合,6月末に播種を行ない中苗を育成する。もし収穫が早くなる場合は移植5〜7日前に1回のみ追肥を行なう。(5)欠株率を低くし,栽植密度を高めるために田植機は1株本数が最大となるよう調節して使用する。(6)露地育苗は苗の徒長,苗取,運搬などの点でまだ問題があるが,中苗の省力育苗法として期待されるのでさらに検討する必要がある。
- 日本作物学会の論文
- 1972-06-30
著者
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