ヤマノイモとサトイモの種イモにおける萌芽以後の貯蔵物質の動態に関する形態学的研究

概要

論文の詳細を見る
ヤマノイモとサトイモの種イモにおける萌芽以後の貯蔵物質の分解と消費に関する機構を理解するため,ヤマノイモ塊茎とサトイモ球茎における髄部柔細胞の貯蔵デンプンとサトイモ球茎の粘液道に存在する粘液の萌芽以後の動態について走査電子顕微鏡の観察により検討した.ヤマノイモ塊茎では,デンプンの分解は維管束から離れた部分から維管束へと向かって進行したが・頂端分裂組織に近い先端部,中央部,茎に近い基部においてデンプンの分解の進行程度には差が認められなかった.一方,サトイモ球茎では,デンプンの分解は,維管束から離れた部分から維管束へと向かって,また,球茎基部から頂端分裂組織寄りの上部へと向かって進行した.サトイモ球茎の個々の髄部柔細胞内における動態では,まず,アミロプラストの包膜の分解が先行し,その後,個々のデンプン粒が分解されてゾル状物質へと変化した.ヤマノイモ塊茎では,包膜がアミロプラスト周縁部から先行して分解され,続いて,デンプン粒も周縁部から先行して分解されてゾル状物質へと変化した.これらのゾル状物質は,急速凍結-真空凍結乾燥法による試料調整により,密度を低下させながら減少していくことが観察された.また,この方法により,サトイモ球茎における粘液道中のアラビノガラクタン-プロテインを主成分とする粘液の動態についても可視化された.粘液の分解は,萌芽以後において球茎基部から上部へ,また,粘液道内の周辺から中央部へと向かって密度を低下させながら進行した.これらの動態から・デンプンだけでなく粘液も,萌芽および栄養生長期中期頃までの植物体の生長に主に利用されていることが示された.
日本作物学会の論文
2001-12-05

ヤマノイモとサトイモの種イモにおける萌芽以後の貯蔵物質の動態に関する形態学的研究

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク