低温によるイネ幼植物生長抑制の生理的機作
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概要
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イネの冷害発生の限界温度は19-17℃と報告されており, 熱帯原産植物が chilling injuryを受ける温度より高い温度域にある. そこでこの温度域におけるイネ幼植物の生長について検討した. シャーレ内〓紙上におけるイネ発芽幼植物の幼芽, 幼根の生長速度と温度との関係をアレニウス曲線で表示すると, 18-17℃と13-12℃の2点で生長速度が不連続的に変化することが認められた. しかし, 酸素吸収速度は温度の低下に伴って直線的に低下し, チトクロームCオキシダーゼ活性も同様に直線的に変化した. また, ATP含量は6℃まで温度による差異は認められず, 5℃以下になると急減した. 一方, ^<14>C-ロイシンのたんぱく質への取り込みは, 27℃から18℃までは温度による差異が認められず, 18℃以下になると取り込み量が急減した. 6葉期の幼植物の第6葉以上の若い組織におけるたんぱく質分画への重窒素の取込みも, 18℃以上では温度による差が認められず, 18℃以下では急減した. したがって, 18℃以下ではたんぱく質の合成が阻害されることが推定された. 熱帯原産植物がchilling injuryを受ける温度の限界は12-10℃と報告されており, 本実験で認められたl8℃〜12℃での生長停滞は chilling injuryの限界温度よりも高い温度域にある. したがって, その生理機構は, chilling injuryのそれとは必ずしも同一ではないと推測される. 本実験の結果では, 呼吸エネルギー代謝が阻害されて生長速度が低下するとは考え難く, 生長の阻害に先立ってたんぱく質の合成が阻害されると推定された.
- 日本作物学会の論文
- 1982-03-20
著者
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