イネ幼根ポリソームによる無細胞系の蛋白合成の温度依存性

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前報で報告した^<14>C-ロイシン及び^<15>N-アンモニウムのイネ幼根および6葉期幼植物の蛋白分画への取込みの低温による阻害の機構を明らかにするため, イネ幼根から抽出したポリソームを用いて無細胞系を構成し, その^<14>C-ロイシン取込みの温度依存性を検討した. イネ幼根ポリソーム及びコムギ胚抽出蛋白(コムギ胚ホモジェネートの170,000×g遠沈の上清中の蛋白分画)とで構成した系に於て, トリクロロ酢酸不溶分画ヘの^<14>C-ロイシンの取り込みが認められ, かつ, その取込みはシクロへキシミドで阻害されるが, クロラムフェニコールでは阻害されなかった. 従って, 収込みは混入した微生物によるのではなく, 構成した系によると推定された. ^<14>C-ロイシン取込みのアレニウスプロットは, 30℃から8℃迄の間で一本の直線を示し, 18-20℃での変化は認められなかった. 一方, コムギ胚抽出蛋白の代わりに, イネ幼根抽出蛋白(イネ幼根ホモジェネートの170,000×g遠沈の上清の濃縮液中の蛋白分画)を用いた系では, ^<14>C-ロイシン取込みのアレニウスプロットに於て, 19℃付近にブレーキングポイン卜が認められた. 更に, 13℃または10℃で低温前処理したイネ幼根から抽出したポリソームのショ糖密度勾配遠沈の沈降プロフィールに於て, 沈降度の大きい重いポリソームが低温処理によって減少する傾向は認められず, 寧ろ増加の傾向を示した. 以上から, 前報で認められた in vivo での蛋白合成の低温による阻害は, 蛋白合成系に対する低温の直接の作用によるものと推定される. また, コムギ肛抽出蛋白を用いた無細胞系の^<14>C-ロイシン取込みのアレニウスプロットと, イネ幼根抽出蛋白を用いたそれとの差異は, 両抽出蛋白中に存在する蛋白合成系の可溶性因子, 恐らく伸長因子あるいは終了因子, の差異によると推測される.
日本作物学会の論文
1987-03-05

イネ幼根ポリソームによる無細胞系の蛋白合成の温度依存性

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