有機農業用資材として用いられるいわゆる天然・植物抽出液「夢草」に含まれる殺虫活性成分
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概要
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有機農業に用いられるいわゆる天然・植物抽出液の一つである夢草は, ヨトウガとナミハダニに対して高い殺虫活性を示し, さらにモモアカアブラムシについては有機リン剤・カーバメイト剤抵抗性クローンと感受性クローンの両方に対して同等に高い殺虫活性を示した.しかし, コナガ, イエバエ, チャバネゴキブリのピレスロイド剤抵抗性系統に対する殺虫活性は, 対応する感受性系統に比較して著しく低かった.また, 本剤を処理したイエバエとチャバネゴキブリでは, タイプIIピレスロイド剤を処理したときとよく似た中毒症状の経過が観察された.チャバネゴキブリの露出した腹部神経索に対する作用を電気生理学的に測定したところ, タイプIIピレスロイドのサイパーメスリンを処理した場合と同様の反応がみられた.殺虫活性成分を精製して^1H NMR分析および光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー分析を行なったところ, サイパーメスリンの特定の異性体の混合物が含まれていることが明らかになり, 夢草の高い殺虫活性は合成ピレスロイド剤の混入によるものと結論された.天然・植物抽出液と称する他の二, 三の資材についても分析したところ, ほぼ同じ異性体比のサイパーメスリンが検出された.有機農業において病害虫・雑草の防除に用いられるいわゆる天然起源の資材が安全性のチェックなしに使用される場合の生産者, 消費者, および環境に対する危険性について指摘し, 行政的な安全対策の必要性について提言した.
- 日本農薬学会の論文
- 1996-02-20
著者
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本山 直樹
千葉大学園芸学部生態制御化学研究室
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駒形 修
国立感染症研究所 昆虫医科学部
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呉 鴻圭
千葉大学園芸学部生態制御化学研究室
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Mahmood Tariq
千葉大学園芸学部生態制御化学研究室:(現)パキスタン国立農業研究センター
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駒形 修
千葉大学園芸学部生態制御化学研究室
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