薬物速度論的手法による殺虫剤の連合作用の理論的解析
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概要
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連合作用が発揮される理論的条件を探索するために, 単一の酵素による解毒と作用点の阻害のみが含まれる単純なモデルに, 透過や活性化などの要因を加えてコンピュータシミュレーションを行なった.組み合わせた二つの薬剤は解毒酵素を拮抗的および非拮抗的に阻害し合う状態を仮定した.その結果連合作用に関して以下のような性質が明らかになった.1) 相乗作用の基本的条件は次の条件が満たされることである.V_B≪V_AI_B/I_A, K_B≪K_AI_B/I_AかつK_B≪I_Bなお, AとBは薬剤AとBを示し, それぞれの薬剤はMichaelis-Menten型の速度式によって最大解毒速度(V)とMichaelis定数(K)に依存して解毒される.また, Iは解毒過程を含んだ条件で作用点を50%阻害する薬剤の濃度, すなわちI_<50>を表わす.I_Aが小さく, V_Aが大きいほうがこの条件を満たすことから, 薬剤Aは作用点に対する阻害能力が大きく, かつ解毒されやすいという条件が必要である.薬剤Bは作用点を阻害するのに必要な濃度よりも低濃度で薬剤Aの解毒を阻害できなければならない.この条件を満たすほど"相乗作用のポテンシャル"は大きく, 薬剤Bが薬剤Aの解毒酵素を阻害する結果, 薬剤Aの濃度が増し作用点の阻害速度を増加させることになる.2) 相乗作用が最も大きくなる薬剤AとBの混合比はI_AとI_Bの比(LD_<50>の比)に等しい.3) 組み合わせた両薬剤の皮膚透過性が遅くなるほど, 相乗作用のポテンシャルが十分に発揮されなくなり, 相乗作用は減少する.4) 薬剤間の相互作用が発揮される解毒酵素以外の酵素による解毒速度が大きいほど, 相乗作用は小さくなる.
- 日本農薬学会の論文
- 1991-08-20
著者
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