イエバエにおける高レベルのダイアジノン抵抗性の生化学的要因
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概要
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ごみ処理場より採集したイエバエ個体群を, ダイアジノンを用いて室内で数世代淘汰したところ, LD_<50>で50μg/♀という著しく高い抵抗性を示し, 抵抗性比は感受性系統であるCSMA系の1400倍であった.抵抗性のメカニズムには少なくとも三つの解毒酵素系が関与していることが示唆された.チトクロームP-450依存性モノオキシゲナーゼ系はダイアジノンを分解し, ジエチルチオリン酸とジエチルリン酸を生成した.グルタチオントランスフェラーゼは脱アルキル化と脱アリール化を触媒し, ダイアジノンとダイアゾクンンを分解した.ダイアゾクソンのリン酸トリエステル加水分解活性は抵抗性系統にのみ認められた.この活性は調べたすべての細胞画分に存在し, 可溶性画分において最も高い活性が認められた.さらに抵抗性系統では, 作用点であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の感受性が低下しており, ダイアゾクソンによる阻害の2分子速度定数k_i値はCSMA系に比較して約6倍低かった.この系統の著しく高いダィアジノン抵抗性のレベルは, これら複数の要因による相乗効果によってもたらされていると推察される.
- 日本農薬学会の論文
- 1990-05-20
著者
-
大井 正典
バイエルクロップサイエンス株式会社
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大井 正典
Laboratory of Environmental Biology, Faculty of Horticulture
-
DAUTERMAN Walter
Department of Toxicology, North Carolina State University
-
Dauterman Walter
Department Of Toxicology North Carolina State University
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