上越教育大学生の学習経歴と学生生活 : 日仏比較に向けた質問紙調査の問題点と課題
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概要
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学習社会の実現と深い関わりをもつ万人型の教育機会(ユニバー サル・アクセス)への移行が世界的な問題になる中で,学生集団の多様性を前提にした多元的な研究枠組を構築することが求められている。小論では,高等教育進学者の多様化した学習経歴と学生生活の状況を分析するにあたり,日本とフランスの比較に向けた質問紙調査の問題点と課題を探る。分析に用いたデータは,本調査に先立って上越教育大学の1・2年生を対象に実施した調査によるものと,同様に第一段階の比較参照のためにフランスの2大学で収集した同じ内容の調査データである。上越教育大学生は,進学ルートの面においても,過去の学習経歴においても同質性が高く,従来のエリート・マス型の特性を保持している。小・中学生時に習いごとに通い,中学生以降に塾・予備校・家庭教師も経験するという学習経歴のメインルートが見出され,それが家庭教育や社会階層の違いにも結びついていることが明らかになった。しかし,その違いが学習意欲の格差に即座に結びつくわけではなく,学校的な学習規範に加えて「要領よさ」という観点を導入する必要が示唆された。メインルートにいる要領主義の学生の対極には,学校外学習や家庭教育の経験が少ない独学タイプの学生が存在する。そうした周辺層において多様化した学生に着目することにより,万人型の教育機会を念頭に置いた国際比較調査の可能性が開かれる。Our concern of this paper is to examine the variety of learning experiences and student life in the transition from elite and mass higher education to universal access. We have chosen, as a first attempt, the students of the first and second grade of Joetsu University of Education in Japan, in comparison with the case of Rouen University and Paris 8 University in France. We are also interested to note the problems of international survey of this subject. The greater part of students of Joetsu attended Juku school and cultural or sport lessons when they were pupils of elementary or junior high schools. Their characteristics of age, nationality, type of high school and (few) vocational experience are very homogeneous too. More they had experiences of extra-school education, more they received family education in their good social conditions. However, there is no direct relationship between learning experiences of the past and studying attitudes in the present life. The main attitude can be explained by introducing the notion of "knack" (yoryo) for the success. In the other side, we can observe a small number of self-studying students who didn't depend on extra-school and family education, but have a strong will for leaning in the university. In order to try an international comparison of universal access, it is very important to take account of this non-major type of students.
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