リーセルラルセン山北麓の氷底変形構造を伴う氷河堆積物 -Richardson Clayの再検討の必要性-

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西エンダービーランド, リーセルラルセン山北麓にひろがるモレーン原を下刻するガリーの谷壁に沿う露頭で, 氷縞粘土の層相をしめす湖成堆積物(リチャードソン粘土層)とその上下の堆積物の記載を行った。その結果, リチャードソン粘土層の層序・層相について, M. Hayashi (Proc. NIPR Symp. Antarct. Geosci., 4,119,1990) の記載に加えて, それを挟在する角礫層との間に特徴的な構造を示す境界層があることを見いだした。リチャードソン粘土層とその上下の境界層の主な特徴は, 堆積物全体に剪断構造が発達していること, 剪断面を介して逆断層的な構造があること, その剪断のおよぶ層準が限定されること, 上位の層準に下位層準起源の泥偽礫が大量に含まれることなどである。ティル生成のプロセスと氷河底環境についての研究には近年顕著な進展があった。その成果を考慮し, 大陸氷床の挙動および氷床底の環境を検討することによって, リチャードソン粘土層にみられる上記の特徴を解釈することが可能となると考えられる。リチャードソン粘土層そのものは, 氷河前面湖底で堆積したことは確実であり, その前後に, この位置まで氷河が前進して特徴的な構造をもつ境界層や全体の変形構造が形成されたと考えられる。その変動が, 氷河(氷床)の末端付近の小変動であるのか, 異なる氷期の拡大を示すものなのかを判断できる材料はまだない。この地域における氷河底環境や氷床変動の復元のため, ならびに氷河底プロセス研究への情報提供という意味においても, この露頭をさらに詳細に調査・解析することが必要である。

リーセルラルセン山北麓の氷底変形構造を伴う氷河堆積物 -Richardson Clayの再検討の必要性-

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