水文データより計算した河床剪断応力と河床堆積物限界掃流力の比較
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概要
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北海道の札内川・歴舟川・後志利別川の3河川において,砂礫堆堆積物の粒径組成からKomar式およびShields式を用いて限界掃流力の推定を行い,この値と水文統計量から計算した河床勇断応力とを比較した.また札内川において,段丘化した河床堆積物および砂礫堆堆積物の層序を詳細にスケッチするとともに,段丘化した河床堆積物の限界掃流力についても検討した.各河川の砂礫堆では,表層下部の充填層の粒径組成からKomar式を用いて求めた限界掃流力の値τ_<cmax>は高水位での河床勇断応力にほぼ等しかったのに対し,表層すかし礫層の粒経組成からもとめたτ_<cmax>岬は高水位勇断応力より大きいものの洪水時勇断応力よりはるかに小さかった.一方,表層下部充填層あるいは表層すかし礫層の最大粒径からShields式を用いて求めた限界掃流力τ_<cShields>は1〜2年に一度の頻度で発生する洪水時の剪断応力に近い値を示したものの,明瞭な関係は認められなかった.また,札内川の段丘化した河床堆積物および砂礫堆堆積物の両者において,多くのすかし礫層を認定した、ただしこのすかし礫層は,水平方向の連続性は良くなかった.すかし礫層の下部にはマトリックスが砂で充填された層が必ず存在した.しかも,すかし礫層とその下部の充填層で構成されるユニットは累重していた.混合砂礫の掃流運搬研究に関するレビュー結果に基づき,各ユニットは混合粒径砂礫よりなる掃流土砂が運搬される過程でのダイナミックセグレゲーションあるいは堆積後のアーマリングにより形成されたと判断した.また段丘化した河床堆積物中の充填層粒径組成から求めた限界掃流力は,札内川の高水時勇断応力に近い値だった.この段丘化した堆積物は最近数十年ないし100年程度の間に堆積したものであり,しかもこの間に大きな気候変動はなかった.これらのことは,段丘化した堆積物中の充填層粒径組成より計算したτ_<cmax>は,その堆積物が運搬さた当時の高水時の水文環境復元に有効であることを示唆する.
- 2003-04-25
著者
-
倉茂 好匡
滋賀県立大
-
平川 一臣
北海道大学大学院地球環境科学研究院
-
山縣 耕太郎
上越教育大
-
山縣 耕太郎
上越教育大学学校教育学部
-
倉茂 好匡
滋賀県立大学環境科学部
-
倉茂 好匡
滋賀県立大学環境科学部環境生態学科
-
平川 一臣
北海道大学・地球環境研
-
平川 一臣
北海道大学
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