日本ウズラの近交群と無作為交配群における初期胚に及ぼすアクチノマイシンDの影響
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概要
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本研究は近交による発生前期での胚死亡の原因に関する情報を得るために,代謝拮抗物質であるアクチノマイシンDが日本ウズラの近交群と無作為交配群における初期胚に及ぼす影響について検討した.実験に使用した日本ウズラは近交群1世代と6世代および無作為交配群である.アクチノマイシンDのLD50値の検討では,原液(2mg/70%エチルアルコール10m1)の5段階稀釈濃度が孵卵後48時間目の種卵の卵黄中に0.015ml注入された.次に無作為交配群でのLD50値が近交群と無作為交配群の種卵の卵黄中に注入された.この時の注入方法はLD50値検討の場合と同様とした.注入された種卵はさらに48時間孵卵し,胚死亡率,胚発育,胚奇形の出現率について検討した.胚奇形は7種類に任意に分類した.得られた結果は要約すると以下の通りである. 1.アクチノマイシンDのLD40値は近交群の1世代目では35.2μg,6世代目では29.0μg,一方無作為交配群では47.9μgとなり,近交群でのLD50値は近交世代に伴い急激な低下が認められた. 2.無作為交配群のLD50値を使用して検討した結果,近交群での胚死亡率は近交に伴い増加し,無作為交配群のものに比較して高い値を示した. 3.胚発育についてLD50値を使用して検討した結果,近交群では胚発育の遅延が著明であった.また,近交群では体の大きさと血管の形成に著しい影響が認められた. 4.胚奇形の出現率についてLD50値を使用して検討した結果,胚奇形の出現率は近交群が無作為交配群よりも有意に高い値を示した.分類された胚奇形の中で,尾芽の発育遅延・発育不全,無尾と発生不全・矮小の胚奇形の出現率は近交群,無作為交配群ともに高い値を示した.近交群でのこれらの胚奇形の出現率は無作為交配群の場合よりも高い値を示した. 5.以上の結果から,近交群では初期胚のタンパク合成に関与する代謝活性が低下し,そのため初期発生段階において胚死亡がひきおこされたものと考察した。
- 岡山大学の論文
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