飽気木材中の溶質拡散 II : 電解質の拡散におよぼす温度の影響(林学部門)

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前報に続き, 飽水木材中の溶質拡散に及ぼす温度の影響を2種の電解質(Na-PCP, KCl)を用い, 25∿70℃の温度範囲にわたり, ヒノキおよびブナ材の3構造方向について検討した。測定装置は拡散セルや電気抵抗の測定回路における若干の改良を除いては前報のそれと全く同様であり, 測定には直径4cm, 厚さ1cm(拡散方向が繊維方向)および0.15cm(拡散方向が半径および切線方向)の円板形の試験片を供試した。得られた結果を要約すると次の通りである。(1)時間-透過量曲線をプロットした場合, 定常状態における測定値の変動は2.0%以下であった(Fig. 2)。(2) log D-1/T曲線をプロットした場合, ヒノキ材のR-方向におけるNa-PCPの拡散を除いては近似的に直線関係が得られた(Fig. 3,Fig. 4)。(3)ヒノキ材ではT-方向とR-方向の拡散係数に差異が認められなかったが, ブナ材の場合にはT-方向の拡散速度はR-方向のそれの約2倍であった。また, 両材のL-方向の拡散速度はT-およびR-方向のそれの5∿36倍であった(Table 3)。(4) KClの拡散係数はNa-PCPのそれよりもかなり大きく, とくにこの傾向はT-およびR-方向の拡散において顕著であった(Table 4)。(5)拡散の見かけの活性化エネルギーおよび平均の温度係数についてみると, 一般にNa-PCPはKClよりも, またT-およびR-方向のそれはL-方向よりも大きく, とくにこの傾向はヒノキ材において顕著であった(Table 5)。(6)木材中の溶質の拡散速度は拡散通路内に存在する有効毛管の毛管径とその数に支配される。また, 拡散の見かけの活性化エネルギーや平均の温度係数は個々の有効毛管, とくに分子やイオンの自由拡散経路の寸法, および単位拡散距離中に通過する自由拡散経路の直径以下の毛管数に関係することが推測された。
1968-10-15

飽気木材中の溶質拡散 II : 電解質の拡散におよぼす温度の影響(林学部門)

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