Gadodiamide 投与を確認しえた nephrogenic systemic fibrosis (NSF ; 腎性全身性線維症)の1例
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概要
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症例はnephrogenic systemic fibrosis (NSF) 発症時に44歳の男性である. 36歳で糸球体腎炎と診断され, 血液透析導入となった. 44歳で生体腎移植が行われたが, 移植2日目より無尿となり, 4日目より血液透析を再開した. 移植23日目にGadodiamide 15mLを用いてmagnetic resonance angiography (MRA) が行われ, 動脈吻合部狭窄と診断された. MRA実施後約1か月にて左前腕の腫脹, 疼痛, 熱感, 皮膚硬化が出現し, 徐々に増悪, 手指関節の拘縮も出現した. 症状は次第に四肢に広がり, 両側肩関節を含む上下肢関節も拘縮となった. 数か月後にはほぼ症状が固定し, 四肢の皮膚硬化と関節拘縮に改善はなく, 50歳の現在かろうじて歩行が可能な程度である. 発症から約7年後にNSFの可能性に気づかれ, 左前腕より皮膚生検を行い, 真皮に炎症細胞浸潤の乏しい密な膠原線維の肥厚増生と, 真皮樹状細胞や組織球の増生がみられ, NSFに矛盾しない所見であった. 以上のような経過, 臨床所見, 病理所見はGadodiamide投与が契機となったNSFに合致するものと考えられた. NSFは, 腎不全患者に生じる全身の皮膚硬化と関節拘縮を特徴とする疾患である. 最近, 核磁気共鳴検査 (magnetic resonance imaging [MRI]) に用いられているガドリニウム造影剤が原因であるとの報告が相次いでいるが, Gadodiamide投与後に発症したとされる報告が圧倒的に多い. その発症機序には不明な点が多いが, キレートより遊離したガドリニウムが皮膚などに沈着し, 線維化を生ずると考察されている. なんらかの大きな組織侵襲 (外科手術や感染症) が存在する場合に発症の可能性が高いともいわれる. いずれのガドリニウム造影剤でも生じ得る重篤な副作用であり, 腎機能障害のある場合, あるいは透析患者には原則的に投与すべきではないと考えられる.
- 社団法人 日本透析医学会の論文
- 2007-09-28
著者
-
遠藤 啓吾
群馬大学医学部核医学科
-
遠藤 啓吾
群馬大医・附属病院・画像診療部
-
遠藤 啓吾
群馬大学医学部
-
遠藤 啓吾
群馬大学病院
-
佐野 孝昭
群馬大学医学部第2病理
-
佐野 孝昭
群馬大学医学系研究科応用腫瘍病理学
-
対馬 義人
群馬大学医学部附属病院核医学科
-
岡部 和彦
島門会本島総合病院泌尿器科
-
岡部 和彦
本島総合病院泌尿器科
-
対馬 義人
群馬大学画像診療部・核医学
-
対馬 義人
群馬大学医学部画像核医学・画像診療部
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