Wide-neck瘤に対するEnterprise VRDを用いたstent assisted coilingの初期成績
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概要
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【背景】2010年1月よりEnterprise VRD(Johnson & Johnson Codman, Miami, FL, USA)が薬事承認,7月より健康保険償還治療となったことから,これまで治療困難であったワイドネック瘤に対する瘤内塞栓術が試みられるようになった.当院での初期治療成績について報告する.【対象】2010年7月から2011年12月までに当院にてワイドネック瘤31例33病変に対しEnterprise VRDを用いたstent assisted coilingを行った.全例,未破裂瘤であり,コイル塞栓術後の再発がうち6例であった.動脈瘤の局在は内頚動脈 15例,中大脳動脈 2例,前交通動脈 3例,脳底動脈 12例,後大脳動脈 1例であった.動脈瘤の最大径は平均11.6mm(7-25mm),ネック径は平均6.5 mm(4-13.8mm)であった.全例アスピリン100mg+クロピドグレル75mgのdual antiplatelet therapyを術前7日前より開始した.【結果】ステント留置の手技成功率は100%であった.5例(15.2%)でProwler Select Plus(Johnson & Johnson Codman, Miami, FL, USA)の直接誘導が困難であり,カテーテル交換を必要とした.1例でステント留置時のカテーテル滑落により再誘導を要した.全例塞栓術が施行でき,治療直後に完全閉塞がえられたのは25例(75.8%)であった.全例でjailing techniqueで塞栓開始したが,8例(24.2%)で塞栓途中にtrans-cell techniqueへ切り替えた.術中の有害事象としては母血管の血栓性閉塞を2例,くも膜下出血を1例経験したが,いずれも無症候性に留まった.術後12時間後に1例で穿刺部血腫を契機とした低血圧を起因とした穿通枝梗塞を経験し,morbidity & mortality rateはそれぞれ3.0%と0%であった.フォローアップ期間の有症候性合併症は認めていない.フォローアップの血管撮影は術後1年目で10例に施行でき1例で無症候性のステント閉塞を認めた.【結論】Enterprise VRDを用いたstent assisted embolizationの初期成績は良好であった.Enterprise VRD導入により,治療困難であったワイドネック瘤が,より安全に治療可能となった.
著者
-
宮本 享
京都大学医学研究科脳神経外科
-
菊池 隆幸
京都大学医学研究科 脳神経外科
-
竹本 光一郎
京都大学医学部 脳神経外科
-
石井 暁
京都大学医学部 脳神経外科
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後藤 正憲
京都大学医学部 脳神経外科
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宗光 俊博
京都大学医学部 脳神経外科
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安藤 充重
京都大学医学部 脳神経外科
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山尾 幸広
京都大学医学部 脳神経外科
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菊池 隆幸
京都大学医学部 脳神経外科
-
宮本 享
京都大学医学部 脳神経外科
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