膜のファウリングの原因と洗浄による透過流束の回復性
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概要
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生脱脂乳(65°C, 30分殺菌)および還元脱脂乳を2種の膜(ポリアクリロニトリル膜:PAN膜,ポリスルフォン膜:PS膜)で,限外濾過(50°C, 3kg/cm2, 2.4m/sec)し, 6倍まで濃縮した.膜透過流束はファウリングにより低下したが,これらの膜表面のゲルの有無を,目視および触感で確認したところ,還元脱脂乳の場合のみ,膜種に関係なく,ゲルが確認された.しかし,透過流束は, ゲルの有無に関係なく,また膜種にも関係なく, 6倍濃縮付近で約10l/m2・hrに収束した.これは,ゲルは透過流束にあまり影響を及ぼさないことを示唆するものである. さらに,生脱脂乳でファウリングが生じた膜の洗浄テストを実施した.水洗浄でも,また膜面をスポンジで手洗しても,いずれの場合も,純水透過流束はほとんど回復しなかった.この後に実施したアルカリ(Ultrasil-25, 1%)洗浄により,純水透過流束は75%(PS膜)〜100/(PAN膜)回復した.これらの洗浄液のファウリング物質成分中,蛋白質含量のみが経時的に増加した. これらの結果は,脱脂乳の限外濾過濃縮時,透過流束の低下をもたらすファウリングは乳蛋白質の膜細孔への目詰りであることを示唆している. 本研究は,食品産業膜利用技術研究組合(14)の研究の一つとして行われたものである.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
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神武 正信
山口県立大学家政学部
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中尾 真一
東京大学生産技術研究所
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渡辺 敦夫
農林水産省 食品総合研究所
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神武 正信
雪印乳業技術研究所
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内田 幸生
雪印乳業技術研究所
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佐藤 孝義
雪印乳業分析センター
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下田 幸三
雪印乳業分析センター
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