ファウリング膜の走査電子顕微鏡による観察とファウリング物質の分析
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概要
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第1報(1)で,脱脂乳の限外濾過濃縮におけるファウリングは一般にいわれているゲル形成ではなく,膜細孔への乳蛋白質の目詰りであることを示唆する知見を報告した. 本研究では,第1報(1)と同様に脱脂乳を6倍濃縮してファウリングを生じさせた2種類の膜,ポリアクロニトリル膜(PAN膜)とポリスルフォン膜(PS膜)とを用いて,走査型電子顕微鏡で,直接,膜面の観察を行うとともに,これらのファウリング膜から抽出した液の分析を行い,ファウリング物質の同定を試みた. 未使用膜にて観察された細孔は,水ゆすぎ膜,手洗膜ではほとんどみられなかったが,アルカリ洗浄後,再び観察された.これらはファウリング膜の水の透過流束の回復性とよく対応しており,ファウリングは膜細孔への目詰りであることが確認された. 抽出物の分析結果からは,乳蛋白質がファウリング物質の主成分であることが明らかとなった.また,膜面の手洗だけでは,ファウリングを生じた乳蛋白質はわずかしか減少しないことも明らかとなったが,このことは,ファウリング物質は膜面上に付着しているのでなく,膜細孔へ目詰りしていることを裏付けるものである.この目詰りした乳蛋白質はPS膜で0.10mg/cm2膜, PAN膜で0.24mg/cm2膜であった.アルカリ洗浄した膜にも多少の蛋白質の残存がみられた. ファウリング物質とコントロールとして用いたホエー蛋白質濃縮物(WPC)および酸カゼインのそれぞれのアミノ酸含量パターンから,ファウリング物質はホエー蛋白質であると推定された.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
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木村 利昭
雪印乳業技研
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神武 正信
山口県立大学家政学部
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中尾 真一
東京大学生産技術研究所
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渡辺 敦夫
農林水産省 食品総合研究所
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神武 正信
雪印乳業技術研究所
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内田 幸生
雪印乳業技術研究所
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佐藤 孝義
雪印乳業分析センター
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下田 幸三
雪印乳業分析センター
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相良 康重
雪印乳業技術研究所
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木村 利昭
雪印乳業技術研究所
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