寒天ゲルの粘弾性 : クリープと応力緩和解析
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概要
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寒天ゲルのクリープ曲線および応力緩和曲線を平行して測定し,それぞれを力学模型に解析して,ゲルの基礎的粘弾性を明らかにした.さらに,クリープ曲線より得られた力学模型と,応力緩和曲線より得られた力学模型が対応するような等価な模型を仮定し,相互の粘弾性定数の変換式を導き,等価模型の粘弾性定数を算出して,実測値より求めた粘弾性定数と比較検討した.同時に,卵白ゲル,大豆たん白ゲルについても比較検討を行った.さらに,遅延スペクトル,みかけの活性化エネルギー,濃度依存性を求め,つぎの結論を得た. 1. 1.5w/v%寒天ゲル, 13w/v%卵白ゲル, 20w/v%大豆たん白ゲルのクリープ細線は,フックの瞬間弾性体,2組のフォークトの粘弾性体,ニュートンの粘性体の直列結合より成る6要素のフォークト型模型で示された.一方,同一試料の応力緩和曲線は, 3組のマックスウェルの粘弾性体の並列結合より成る6要素のマックスウェル型模型で近似的に対応できるとみなせた. 2. 6要素V-模型の粘弾性定数に対して6要素M-模型の粘弾性定数, 6要素M-模型の粘弾性定数に対して6要素V-模型の粘弾性定数を求める変換式を導くことができた. 3. V-模型とV-模型(M-模型からV-模型に換算したもの), M-模型とM-模型(V-模型からM-模型に換算したもの)の粘弾性定数を比較すると,V-模型の粘弾性定数ではニュートン体の粘性率が最も一致し,ついでフック体の弾性率,ついでフォークト体の粘弾性定数であった.一方, M-模型の粘弾性定数では1番目のマックスウェル体の粘弾性定数が最も一致し,ついで2番目のマックスウェル体の粘弾性定数,ついで3番目のマックスウェル体の粘弾性定数の順であった. 4.濃度1.5w/v%の寒天ゲルの遅延スペクトルは, 2つの極大値をもつ山型分布を示し,濃度13w/v%の卵白ゲルでは1つの極大値がみられ,力学模型の解析による遅延時間との関係が認められた.また,濃度20w/v%の大豆たん白ゲルでは,台形に近い分布を示した. 5.濃度1.5w/v%の寒天ゲルについて,定常流動部の粘性率の温度依存性から求めたみかけの活性化エネルギーは5.3 kcal/moleであり,最長緩和時間の温度依存性から求めたみかけの活性化エネルギーは5.8 kcal/moleであり,水素結合のみかけの活性化エネルギーとほぼ同程度であることが認められた. 6.試料ゲルのクリープ曲線および応力緩和曲線より得られたおもな弾性率には濃度依存性が認められ,寒天ゲルでは2乗則,卵白ゲルでは3乗則,大豆たん白ゲルでは6〜7乗則が成立した.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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