醤油香気成分に関する研究 : (第12報)生醤油の香気成分(その1)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 全く加熱変化を受けぬ生醤油香気成分を求めて,生醤油の溶剤振出物のAl2O3のliquid chromatographyを行つた. 2. 香気の最も佳良なる溜分の分解物として, 1-hydroxy-2-methoxy-4-ethylbenzene, p-hydroxy-phenylethyl alcohol, acetic acid, palmitic acid, benzoic acidが得られたから,醸造生醤油の有する芳香物質の少くとも1つの主体は,上記の諸物質間の解離し易いesterの中に存在する. 3. これらの加水分解物は原物質より遙かに強い醤油香を有するから,これらが生醤油火入の際に加水分解を受けphenol性火香の発生に関与するものと推論する. 4. 粕の水蒸気蒸溜液中にその存在を推定した1-benzoyloxy-2-methoxy-4-ethylbenzene (mp. 58〜59°)がほぼ確実に分離されたが最後的証明には到らない. 5. Vanillic acidが,比較的香気は薄く,一方螢光の最も強い溜分の分解物として得られたので,之は前報迄に想像した程は香気的に重要でないが,醸造醤油の有する螢光成分の中心をなす事が証明された. 6. 以上の他に, ortho 2価のphenolと思われるC8H6O3 (mp. 250〜260° (decomp.))や,何物とも判明しないC10H20O (mp. 320° ca.(decomp.))が得られたが,之等の香気に対する関係は不明である. 本研究は東京大学住木諭介教授の終始御懇篤なる御指導の下に進められている.又同時に坂口謹一郎教授,朝井勇宣教授,竝びに野田産研所長茂木正利博士よりも不断の御指導を辱くした.元素分析は科学研究所微量分析室の労を煩わし,実験に当り同室の滝本清氏の御協力に負う処が多い.なお本研究は野田醤油株式会社の理解ある御援助とその費用の1部は昭和27年度文部省科学試験研究費に據るものである.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
関連論文
- α-アミノ酸の呈味作用に関する研究(第3報) : α-アミノ酸の旨味増強作用について (2)
- 醤油香味成分に関する研究 : (第15報) 火入醤油の香気成分(その2)
- 醤油香気成分に関する研究 : (第14報)火入醤油の香気成分(その1)
- 醤油香気成分に関する研究 : (第12報)生醤油の香気成分(その1)
- 醤油香氣成分に關する研究 : (第6報)高沸點部の香氣成分(其の1) Palmitic acid ethyl ester及びLinolic acid ethyl ester
- 醤油香氣成分に關する研究 : (第7報)高沸點部の香氣成分(その2) Amyl alcoholとamyl acetate
- 醤油香氣成分に關する研究 : (第2報)醤油の火香(その1) C10H22O3なるAcetalの分離
- α-アミノ酸の呈味作用に関する研究(第2報) : α-アミノ酸の旨味増強作用について (1)
- 麹菌の生産物に関する研究(第1報):邦産種麹菌の生産する主として螢光成分について