醤油香気成分に関する研究 : (第14報)火入醤油の香気成分(その1)
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概要
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(1) 醸造醤油の加熱に伴う成分変化を追跡した.その結果時間的に増加するものは結合型及び遊離型の揮発酸及びエーテル可溶性の含窒素酸性物質,遊離型のエーテル可溶性の酸,結合型のフエノール性物質及び470, 530, 610mμで吸収される物質(赤,黄,青の色)等である.遊離型のフエノール物質は加熱後一定時間にて最大となり,その後減少する.又結合型エーテル可溶の酸及び総窒素,アンモニヤ態窒素等は加熱により変化なく,アミノ態窒素及び還元糖は加熱に伴つて減少する. (2) 醤油の加熱に伴つて増加する上記のエーテル可溶性含窒素酸性物質は所謂melanoidin物質と認められるが,これは色のみならず火入香気にも関係し,又火入醤油の全窒素の一部が生醤油に比しKJELDAHL分解を受け難く,又その際著しく泡立性を示す原因をなすものと判断した. (3) 生及び各種火入醤油のエーテル抽出物を弱酸性部(フェノール部),酸部及び中性部に分け,各の紫外部吸収スペクトルの変化を見た.即ちフエノール部は最大吸収が加熱により265mμから284mμ附近に移行し,その量は加熱一定時間後最大値を示しその後減少する.而してこれは既に著者等の分離した1-hydroxy-2-methoxy-4-ethyl benzeneの消長を示すものと結論した.酸部の吸収スペクトルは加熱に伴う最大吸収波長の変化がなく一様に265mμ附近を示し,その吸収量はフエノール部の最大値に遅れて現われる.而してこれはvanillic acidの消長を示すものと結論した.中性部の吸収スペクトルは前2者と異り加熱に伴い最大値を示すことなく逐次増加し,その波長はフルフロール系の物質に一致するが,試料はその呈色反応を示さないからこれが従来いわれたようにフルフロール系物質のみに基因するか否かは疑問である.然しそれにしてもこの溜分が加熱に伴う色の濃化に関係があることは確かであると思われる. (4) 以上の火入に伴う諸成分の変化係数は醤油製造に於る火入度の測定に利用することが出来る.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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