ブドウの温度条件に関する研究 (第3報) : 成熟期の夜温が Delaware の熟期と品質に及ぼす影響
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概要
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1) 鉢植えの3年生の Delaware ブドウの結実樹を果実の完熟前約1か月間 (8月6日〜9月10日), 毎日夜間 (午後6時〜午前8時) に15°,22°, 28°, および35°Cの恒温室に入れ, 昼間は自然の浴光下におき, それぞれの収穫期における果実の品質を比較した。2) 果皮が品種固有の状態に完全着色したときをもつて完熟期とすると, 28°C区は8月27日, 22°C区は9月3日, 15°C区は9月10日が完熟期であり, 35°C区はその後もついに完全着色しなかつた。9月10日に果皮の色素含量を比色法によつて比較したのに, 28°≥22°>15°>35°Cの順であつた。3) 果汁の可溶性固形物含量 (屈折糖度計) は各区とも成熟のすすむにつれて増加した。ただし, 8月27日に28°>22°>15°>35°Cであつたものが, 9月3日には28°=22°>15°>35°Cとなり, 9月10日には22°>15°>28°>35°Cとなつた。この場合, 主な糖の種類 (ペーパークロマトグラフィ法) はブドウ糖と果糖であつたが, 各区の完熟期には両者はほぼ等量であり, さらに熟期がすすむとブドウ糖よりも果糖が多くなつた。4) 遊離酸含量 (滴定法) は成熟とともに急激に減少し, その傾向は高温区ほどすみやかであつたが, 過熟になると各区の間でいちじるしい相違がなくなつた。この場合の主な遊離酸は酒石酸とリンゴ酸であり, 成熟がすすむほど, あるいは高温なほどリンゴ酸の消失が目だつた。5) わが国のブドウの主産地から完熟期の Delaware の果実を取り寄せ, その品質と収穫期前1か月間の日平均気温との関係をみた。その結果, 気温が22〜28°Cの範囲内では, 気温が低いほど熟期は遅れるが, 果汁中の可溶性固形物および遊離酸の含量がともに多くなり, 着色が良好であつた。しかも, 気温の低い長野では果糖がブドウ糖よりも多く, 反対に気温の高い香川では遊離酸の中のリンゴ酸含量が少なかつた。
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