キュウリの花の性表現におけるエチレンの作用と葉の役割
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概要
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キュウリの雌花発現に対するエチレンの作用機構を生理学的に明らかにすることを目的として, エスレルまたはエチレンの施与部位を変えると同時に, 摘葉処理を組み合わせ, さらに, エスレル施与後の各部位のエチレン発生量を経時的に測定し, エチレンの作用を葉の役割との関連から検討した.1. エスレルを第1葉のみ, 第2葉のみ, 第3葉のみあるいは茎頂部のみに部位別施与しても, 第2葉と茎頂部施与または全面施与の場合と同様に雌花発現が著しく助長された.2. エスレル施与と摘葉処理を組み合わせた場合, 葉が存在すれば茎頂部のみ, または根部にエスレルを施与しても雌花発現は誘起されたが, 全ての展開葉を摘除して茎頂部, または根部にエスレルを施与しても雌花発現誘起作用はほとんど認められなかった.3. 第2葉のみを残して他の展開葉を摘除し, 残した第2葉にエスレルを施与し, 経時的に施与葉の第2葉を摘除した場合, 施与6時間後に摘除すると雌花は全く発現せず, 施与12〜24時間後に摘除した場合にはわずかに雌花が発現し, 3日, 6日と施与葉摘除までの時間が長くなるにつれて雌花発現節数が増加し, 施与10日後に摘除した場合には施与葉無摘除区とほぼ同程度の雌花節数が発現した.4. 部位別エチレン処理と摘葉処理を組み合わせて行うと, 無摘葉の状態では茎頂部のみにエチレンを処理することによって全体処理の場合と同様に雌花発現が誘起された. しかし, 全ての展開葉を摘除して茎頂部にエチレンを処理した場合, 及び第3葉のみを残して他の展開葉を摘除し, 第3葉にエチレンを処理した場合には雌花が全く発現しなかった.5. エスレル施与によって, 施与部位でエチレン発生量が著しく増加すると同時に他の部位でも増加したが, 施与2日後に比較して施与5日後には各部位とも全体的に減少した. 茎頂部にエスレルを施与した場合の茎頂部のエチレン発生量は, 無摘葉区に比べて摘葉区で著しく多かった.6. 以上の結果から, 茎頂部のエチレンレベルと雌花発現は密接な関係にあるが, エチレンレベル単独では雌花発現機構を説明することは無理であり, ある一定のエチレン濃度が保持されるとともに, 成熟葉で生成される花成刺激の供給によって, 雌花発現が誘起されるものと推察される.
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