TiO2-CaO系磁器誘電體の研究
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概要
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(1) TiO2-CaO系磁器の誘電體力率は添加大理石量の増加と共に急激に減少し, 大理石添加量が45.5%) 重量百分率, 以下同じ) のところで最小値を示し更に大理石を添加すると燒成磁器化不能となり, 誘電體力率は再び増大する。しかして高周波蓄電器用誘電體として使用出來るものと考えられる範圍は添加大理石量が29.4-45.5%の間にあるものである。(2) 本系磁器の誘電率は大理石添加量6-8%のところに最小値を示す點があり, それより添加大理石量を増加すると共に誘電率は漸次増大し, 大理石含有量45.5%の所で最大値を示し, それより更に大理石を増すと燒成磁器化不能となり, 燒成試料は多孔質となり, 見掛の誘電率は急激に減少する。しかし, 氣孔率の高い割にその見掛誘電率は大きな値を持つている。一般に酸化チタン磁器の誘電率は添加物の量が多い程減少するものと考えられてきたが, 本系磁器では全く逆で大理石添加量の増加と共にその誘電率は益々増大し, ルチル状酸化チタンの平均誘電率114より大なる値を持つものがこゝに得られた。この値は又B. M. vul氏等の得たカルシウムのチタン酸鹽の誘電率の値よりも更に大であり, A. von Hippel氏等の得た値に匹敵するものである。なおこの誘電率と調合比との關係は燒成牧縮率と調合比との關係と酷似している。(3) 各種調合組成における誘電體力率と燒成温度との關係は添加大理石量23.8%迄は大體燒成温度の高い方が誘電體力率は大となる。又添加大理石29.4%と34.9%の試料では燒成温度を高めてゆくに從い誘電體力率は初め減少し次いで増大する傾向を持つ。(4) 各種調合組成における誘電率と燒成温度との關係は, 燒成温度上昇と共に誘電率は初め増大し, 最大値を示し, 次いで減少する樣な傾向を持つ。このことは燒成收縮率と嵩比重の燒成温度に對する關係と類似し, かつ吸水率, 見掛氣孔率および耐急熱急冷性の燒成温度に對する關係と對照的である。(5) 充分に燒成磁器化した試料の嵩比重は, 大理石含有量10.0-29.4%で最大値を示し, 又耐急熱急冷性は4TiO2・CaOなる組成で最大値を示す。終りに本研究は戰時中, 當時の住友通信工業株式會社でなされたもので丹羽保次郎, 小林正次, 釜范善一吉田梅次郎の諸博士より御懇切なる御指導と御鞭達を賜つた。又東京工業大學教授山内俊吉博士よりも種々御指導を頂いたもので, 以上の方々に對して衷心より厚く感謝の意を表する次第である。
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