マイクロ波領域における積雪の誘電的性質
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概要
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湿った積雪はマイクロ波領域で誘電率分散を示す.これは水の誘電率分散のためである.そこで, 湿った積雪の誘電率を, 理論モデルに立脚して, 構成要素の誘電率を用いて表わした.理論モデルは次の4つの仮定から成る : 1) 湿った積雪を, 球形の氷粒と, 氷粒の間に捕えられたレンズ状の水滴が, 空気中に分散した混合物と看作す.2) 水滴の反電場係数は, 回転楕円体のそれ- (δ, δ, 1-2δ);0≦δ≦1/2-で近似出来る.3) Polder and van Santen (1946) のmixing formulaが適用出来る。4) 水滴の反電場係数は水の体積占有率 (<I>V<SUB>w</SUB></I>)に依存する.仮定1〜3) より決まる式は, パラメーター, δを含んでいる.δを決定するためには, 精度の高い密度, 含水率および誘電率の測定値が多数必要であるので, 雪粒の代りにガラスビーズを用いた模擬積雪を使って8.83GHzで実験した.得られた測定値と, Sweeny and Colbeck (1974) が6 GHzで行った同様な測定値とを使って, δ=0.06+0.25<I>V<SUB>w</SUB></I>なる関係を得た.これは, <I>V<SUB>w</SUB></I>が0.15以下のとき, 偏平回転楕円体の軸比が0.08〜0.15であることを示している.計算値と測定値は良く一致した.天然の積雪の密度, 含水率および誘電率を8.83GHzで測定した.測定値のうち半数が計算値と一致した.残りの大部分は, 水滴を球形と看作して計算される値と一致した.残りは, 模擬積雪の場合より偏平な水滴の場合に相当した.今後は, 天然の積雪で精度高い測定値を多数揃え, 各グループ毎にδの値を決定しなければならないことが分った.数百MHz以下における計算値は, Denoth and Schittelkoph (1978) が18.5MHzで決定した理論式の値より僅かに小さかった.これは, 20MHz帯で測定された乾いた積雪の誘電率から計算された氷の誘電率が, 9GHz帯で同様にして求められた値より, 0.3大きいことによるためであることが数値実験で明らかとなった.この違いが氷の誘電率の小さな分散として組み込めるならば, 本研究の理論モデルは, 超短波からマイクロ波に至る広い範囲で適用出来る.
- 社団法人 日本雪氷学会の論文
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