総論 真空の科学・技術
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
原子物理学の発展の初期には, 大きな飛躍は必ず真空技術の進歩に伴って起こったと言われている.真空技術の大形化は高エネルギー粒子加速器と電子管工業の発達によって達成されたが, 我国への導入にも加速器と電子管が重要な役割りを担っている.私の記憶違いがあるかも知れないが, 第二次世界大戦前の理化学研究所の大型サイクロトロン建設に際しては, 真空ポンプを調査する目的で人を海外に派遣したと聞いている.また, 1919年の段階で, 宗正路氏のピラニ真空計と電離真空計の論文がProceedings of the Phisico-Mathcmatical Society of Japan (日本数物学会記事, 英文) に掲載され海外に知られていることは, 電子管工業と真空技術との強い結びつきを示すものと考えられる.<BR>私が自分で真空技術の進歩を体験することができたのは1949年頃からであるが, 1950年4月には日本物理学会年会の際に真空技術シンポジウムが開かれている.同年3月に真空技術研究会より発行された「真空技術」第1号の浅尾荘一郎会長のご挨拶を見ると, 同会は同年1月に発足したことになっている.幾多の変遷を経てはいるが, この研究会が日本真空協会の成立する萌芽であったと考えてよいであろう.<BR>この頃には, 1949年に発行されたS.Dushman : Scientific Foundation of Vacuum TechniqueとA.G.Guthrie and R.K. Wakering : Vacuum Equipment and Techniquesが入手でき, 海外からの新鮮な情報の集約として驚きもし, また, 喜んで勉強した.前者の序文に「真空技術は研究室規模の純粋科学の雰囲気から飛び出して, 20年前には想像もつかなかったようなスケールの工学の段階に入った」と書かれていることに感銘を受けた.ちなみに, Guthrie達の本は, 原子力の平和利用のために, 第2次世界大戦中に米国で発達した技術の公開を目的として刊行されたNational Nuclear Energy Series, Manhattan Project Techical SectionのDivision I-Volume1であることからも, 原子力利用における真空技術の位置づけの一端を知ることができるような気がする.<BR>以降40年近い年月の間に真空技術は格段の進歩を遂げ, 真空科学と工学の分野を確立した.この間の各分野の発展に関しては独立の項目で述べられているので, ここでは基礎的な問題に限って, 私の気がついた範囲で研究の進歩を述べてみたい.
- 日本真空協会の論文
著者
関連論文
- 座談会 : 生研の進むべき道
- OB座談会 麻布(六本木)地区での生研 (50周年誌)
- 退官記念講演 : 超高真空技術における気体分子と表面の諸問題
- 励起中性粒子検出法を用いた小型指向性真空計の試作
- 指向性真空計による真空装置の漏れ検出 : 点状気体放出源の測定に関する解析
- 励起中性粒子検出法を用いた指向性真空計の研究
- 到達圧力付近における真空排気系の動的バランスの測定
- 非定常流法による油分子の平均滞留時間の測定 (I)
- コンダクタンス変調法による超高真空での真空ポンプの排気速度測定
- 総論 真空の科学・技術